すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

好きしか言えない ー『最遊記歌劇伝–Darkness–』

6月になって『COCOON』月・星を観てきたんですが、そのあとすぐに『最遊記歌劇伝』にも行ってきました。

ずっと観たいと願っていた作品をついに観劇できたからか、それとも繭期を飛び出し西へ向かった反動の大きさのせいなのか、いつも以上に興奮がすごい。

まだ公演中ではありますが、あと私が観られるのは配信だけなのでひとまず感想を記しておこうと思います。以下、舞台のネタバレと原作の今後の展開にも触れています。

 

最遊記歌劇伝–Darkness–』

初日は「本物だーー!」とばかり思っていて冷静さはかけらもなかったんだけど、2回目以降少しずつ正気を取り戻し、どうにか物語や舞台周辺についても考えられるようになりました。それでもやっぱりなにより大きいのが嬉しいという気持ち。私は本当に、この作品を観ることができて良かったなあ!とっても幸せです。

原作の最遊記で一番好きな場面は、物語のはじめのはじめ、三蔵が悟空を牢から出すところです。ぽかんとした顔の悟空に、しかめっ面で手を差し出す三蔵。2人の手が繋がれる。外伝を経てからはより一層、物語にとって大きな意味を持つ場面です。

歌劇伝でもそれは同じで、「三蔵が悟空に手を差し出す」ことは毎回OPで象徴的に描かれています。劇中で実際に描かれたのは1作目『Go to the West』と再開後の『Burial』かな。何回見ても同じように涙が出てくるから、そこはもう私はだめなんだと思う。

今回、そのシーンが一度きりじゃなくあって、悟空から手を伸ばすような形でも描かれてました。すごく三蔵と悟空が真ん中に据えられた話になってた気がします。

ヘイゼル篇は今のところ原作で最長のシリーズで 、舞台化が発表されたのはこの『Darkness』と次回の『Oasis』の2作。タイトルや煽り文からも想像はついていたけど、物語としては過程の部分で終わってしまうので、今作だけだとやや消化不良の感があります。起承転結の転までという感じ。ちょうど三蔵のかっこ悪いところというか脆い部分が全開になったとこだし…原作未読でシリーズも初見であるというひとには特に、ピンとこない話だったかもしれません。

なんだけど、上にも書いたように三蔵と悟空の関係性を強く印象づけるような演出がされてて、もちろんキャストの演技は素晴らしかったので、私はとっても楽しかったです!!

三蔵と悟空の関係はなんと言い表せるだろう、と考えます。4人まとめてなら仲間と言えるけど、悟浄と八戒のように親友とは絶対に言えない。金蝉と悟空の疑似親子関係ともちょっと違う。三蔵の言う飼い主とペットというのはあんまりだと思いつつ、でもそんなに間違ってないのかも…お互いがお互いの光である関係。

このエピソードは、その三蔵と悟空が、自分の大事なものを見つめ直す話なんだよね。

 

相変わらず、敵役のお歌が上手でした。ヘイゼル役法月さんはスレイジーを映像で見たことあるくらいだったけど、その記憶よりずっと歌が上手かったです。歌劇伝の、歌は上手い人にどんどん歌わせようどんどん、という吹っ切れ方は結構好きです。とはいえ御一行もずっと上手くなってたと思います。私は悟空のすこんと抜けるような素直な歌声がとても好き。

『Reload』までじゃなく異聞の歌もちゃんと取り入れてくれてたの、すごく良かった。「回顧」の歌詞はほとんどそのまま悟空・悟浄・八戒に当てはめることができるんだなあ。EDは忙しいくらいだったけど、最後「Go to the West」にたどり着いたらそれで全部しっくりまとまってしまうからすごい。

三蔵が悟空と背中合わせになって座ってるのがものすごーく可愛かったです。心のシャッター百万回押した。*1原作の悟空の髪が切れちゃったエピソードの再現なのかな…真っ先にあのシーンを思い出しました。最後の出窓に背中合わせで座る2人。違うかな、どうだろう。

 

お師匠様が相変わらず素敵でした。つくづく歌劇伝は『Reload』でいい方法を思いついちゃったよね…今回も不自然じゃなく欠かせない存在。キセルの灰を落とす動作が本当に美しい…原作のビジュアルに似ていることは必ずしも重要ではない、って三上さんの光明を見ると本当にそうだなあと思います。並べると全然違うのに、でもすっごく光明なの、なんだろうね。それは唐橋さんも遠からず言えることで、別に髪型を寄せてるわけでもないのに、もうすっごくニイだし烏哭。私は原作は読んでるけどアニメは見てないので、原作読んでてもあの声で喋りだしますニイ博士。早く烏哭の本気が見たい。怖いけど見たい。

ヘイゼルとガトは逆にビジュアルからぴったりで、またヘイゼルの歌声が素晴らしかったです。高音きれい。しばらくは一行をお願いしますという気持ち。歌唱力という意味でも。ガトの悟空の身長差も良かった。

三蔵一行。今回限りのピンチヒッターということで、さいねいさんが八戒として出演してくださったこと、本当に本当に感謝しています。でなかったら今このときのこの舞台はなかったかもしれない。心配していた一行感もまったく問題なかったです。悟浄はシリーズ重ねるごとに男っぽさが増していい感じになってきたなー。色気が出たというか…脚はいつ見ても長い。「♪もっと見せてよ」のときの振付けが好きです。耳元でひら〜とするやつ。

悟空はねー、もう、とにかく好きです。としか言えなくなってしまうんだけど、相変わらずわけわかんない高さでのバク宙やその他見応えのあるアクションはもちろんとして、元気いっぱい悟空から金錮を外してからのゾッとするような笑顔まで、どこを切り取っても最高でした。悟空を演じてるのが彼で良かったし、彼の演じる悟空を観ることができて良かった。あと彼は、お芝居が上手い人なんだなあーと改めて思いました。好きです。ひとつの表情、声色に詰め込んだ情報量の多さがさ!好きです!!

三蔵は、鈴木さんの当たり役だなあとつくづく思います。まず声がいいし姿もいい…銃を撃つときに袂を抑えるなどの動作ひとつひとつがすごく三蔵らしい。これはキャストみんなに言えることだけど、舞台上の彼らは何もしていないただ立っているときでも、そのキャラクターらしい佇まいでいる。二次元でしか知らないキャラなのに、彼らは三次元を確かに生きている、と感じます。

あと三蔵と悟空の身長差体格差もとても素晴らしい…

ああ三蔵一行だ〜〜といちばん強く感じたのは、ヘイゼルにいちいちカチンときてるところ。息ぴったりな4人がまあ可愛かったです。上海蟹もタラバも美味しいよ!

 

もう明日が千秋楽です。あと一回。今日の公演は配信で見ることができるので、また細かい感想などは書いておきたいです。

最後に、あまりの尊さに涙を禁じ得なかった椎名さんのツイート。「尊い…」とかあまり使いたくない言葉だわーと常日頃思ってるのに、それでも思わず言ってしまったもんね。ここで使わずいつ使うって思ってしまったもんね…

手を繋ぐ三蔵と悟空の写真です(うさぎ)。

あああああ。

そうなのそれなの!!!それなんだよ!!! さっすがーーーー!!!!

 

*1:オタクだからすぐ心の何かを押しがち