すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

覚悟について ー『最遊記歌劇伝-Oasis-』

1月は2019年のまとめを書くなどしていたら終わってました(まだ書き終えてない)。

そんなことよりも『最遊記歌劇伝』の新作を!観てきたのです!!最高だったなー!!今回すごく好き。

去年1月に前作『Darkness』と一緒に発表されてから、1年と1ヶ月後の上演です。鈴木さんと唐橋さんのいない初めての公演。ダークネス終演後から鈴木さん=三蔵がいなくて最遊記歌劇伝が成立するのか、という意見はちらほらと見かけていて、もっと強い口調だと「いないのにやる意味あるの?」と言っている人もいたのだけど、観劇後の今はその人たちへ向けて、あったよー!!と手を振るような気分です。

この形での公演が決まるまでには、たくさんの話し合いがあったと思うのです。制作のえらい人たちだけでなく、おそらくはキャストとも。そうして鈴木さん不在でも物語を先に進めることを決めた。その決断はたぶんいろんな人にとって覚悟のいることで、それを強く感じる舞台でした。

本当に素敵だった。お疲れさまでした。

以下、舞台のネタバレ、原作の展開に触れています。

 

最遊記歌劇伝-Oasis-』

椎名さんの悟空がすごく好きだなー!!と改めて思いました。観ると毎秒ごとにその気持ちが更新されるのですごい。

三蔵がいなくても全然最遊記歌劇伝だったけど、でもやっぱり三蔵が真ん中にいるのとは違う、悟空の最遊記歌劇伝だったという印象です。

最初の悟空のソロ、歌詞が好き。「次に昇る太陽もまた西を目指すのかな」という部分、悟空もそれくらい当たり前に西に向かってたってことなんだろうな。悟空の物語であるオアシスがこの歌詞から始まるという意義の深さがもう。それはそれとして悟空の素直さがそのまま出てる歌詞がとてもかわいい。

今回新曲が多かったような気がします。メインキャストが減って割り振りが増えたからそう思うのかな。みんなすごい歌ってた。そしてみんなすごく上手でした。確実にダークネスより上手くなってない??

歌劇伝の歌は物語の進行から独立してなくて(歌劇だからそりゃそうなんだけど)、話の一場面を担ってるので、シリーズを重ねて誰がどこでどの歌を歌うかに意味が出てくるのが面白いなーと思います。今回は三蔵法師のみなさんが全員いないので特にそういう箇所が多くて、なんか、なんか、エモとはまさにこれだなって……

光明パートだった「あなたに伝えたい」をOPで悟空が歌ったとき、こんな真っ直ぐに「あなた」を見据えた歌い方するんだとちょっとした衝撃を受けました。EDではヘイゼルが担当してたけど、光明が看守ってる視線なのに対して2人にとっての「あなた」は保護者という対比が新鮮。

今回の歌はどれも本当にすごく印象的だったんだけど、なんか一番うわあとなったのが、お決まりの茶番劇で出てきた恋の歌が最後に出てきたことでした。いろんな意味のうわあ!です。初出しそこ!?とも思うし、でもあのバカバカしいくらいの日常で歌われた歌が最後にもう一度歌われることで辛さがより増す、よい演出だった…。情緒がガッタガタになるけれど、情緒なんてガタガタになるためのものだしね!!ヘイゼルの歌唱力で余計に辛いんだよー。

法月さんのヘイゼルは可愛げがあるっていうか、なんかキュート。今回はセリフの掛け合いだけだけど子ども時代も演じていたから特にそう思うのかも。置いていかれて拗ねた子どもみたいで、愛しさが増してしまう。オアシス編は悟空たちのいる妖怪の村だけでなく人間側の描写もなくてはいけないものだけど、ヘイゼルがよく喋るから(褒めてる)三蔵の不在がそんなに気にならなかった。演技の緩急が心地良かったです。

三蔵の演出に関しては、賛否あるだろうとは思ったけど、試行錯誤の結果なんだろうなーって。そりゃ鈴木さんにいてほしかったに決まってるよ!個人的には烏哭と同程度にして、あとは相対する役者さんの演技に任せてもよかったんじゃと思ったけど、それが正解だとも思わない。なのであれがベストなんでしょう。「一寸の虫にも〜」のくだりは次回やってくれるって信じてる。

と、いうのも、冒頭でダークネス振り返り部分があったからです。藤原さん八戒でのVS斉天大聖、観ることができて嬉しかった!そしてダークネスに引き続き斉天大聖のアクションを堪能できてとてもお得な気分です。ガトの銃弾を歯で受け止めてぺって吐き出すところが大好きすぎて何度でも見たい。そしていつもは悟空が歌う「ただ生きている〜」を八戒と悟空を両脇に抱えた悟浄が歌うところもとてもよかった。悟浄といえばソロの太陽くんすごく歌上手くなった!そして歌詞!いつかの原作の扉にあったやつ!

出演キャストが発表されたとき、少女役が女性じゃないのがすこし(いや結構)ショックだったんですが、歌劇伝はもうそういうものなんだと受け入れたら、少女役村田さんはすごく良かったです。ちゃんと少女だった。あとお歌がじょうず!悟空は座組の中でも本当に小さいんだけど、でもその小さい悟空よりさらに小柄で、人材とはいるところにはいるものだ…と思いました。

そして、悟空は本当にかっこよかったです。彼は本当に、人の感情を引き込む演技をする人だと思う。「生きてていいんだ」って子どもたちに言う場面、観客に向けて語りかけるので逆光になって表情がよく見えないんだけど、声だけで思いが伝わる。いいシーンでした。この場面に限らず、照明の使い方は全体的に好きだったな。舞台上だけでなく、客席にまで効果のある使い方で。

なんかもう、一場面ずつここが良かった最高って書けそうなんだけどきりがないのでそれはまた別に記事を書くとして(書きます)、とにかく良かったです。悟空の歌が、たぶんキーがぴったり合ってるおかげでもあるんだろうけど、すごく伸びやかで良かった。EDではダンスしたり走り回ったりずーっとくるくると動いていて、いつもの歌劇伝とは違う悟空が真ん中の歌劇伝を一番感じた部分だったなー。落ち着きがないというか、元気いっぱい。特に好きだったのは、「生きろ」「もっと」という歌。悟空の歌声は、さっきも書いたけど本当にまっすぐ響く。泣きながら地面を殴る場面でこぶしが本当に震えてるのを見て、全身で表現するってこういうことだと思いました。

そういえばカテコでいつもにこにこ顔で出てくる悟空が、今回は真顔で登場して切ないような頼もしいような気持ちでグッときたんですが、最後に悟浄と八戒との挨拶ではいつも通り手を繋いで背伸びしてたので嬉しかったです。椎名さん、挨拶で大きい声出そうってときにちょっと背伸びするのがとてもかわいい。

 

ここまで続けてきた以上、もうキャスト変更はしない方向でどうにか続けていくのでしょう。そういう覚悟をひしひしと感じる作品でした。ヘイゼル編の一段落まであと1回かな?待ってます。だって絶対に見たいよ!外伝だって見たいんだよ!!