すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

本能とは ー舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵-大坂冬の陣-

2021年の観劇初めは刀ステです。先月から関東住まいになったので観劇やイベント予定を入れています。こんな状況ではありますが、上演されるなら元気に観劇したい。
というわけで私にとっては初めてのステージアラウンドに行ってきました。
ほんとにまわった!!!

以下、ネタバレしてます。

劇場について
思ってたほど関東荒野ではなかった(髑髏城レポをたくさん読んできた人間のステアラの印象)。劇場内の至るところに消毒液がおいてあって、入場時以外でもトイレのあとなどシュッとするのに便利でした。
トイレは日によるのだろうけど男性用も開放していて、結構な列にもかかわらず余裕の回転率。物販利用するとなると急がなきゃならないかも。
席は前方下手寄り。すごく見易い場所だったけど、それでも上手での演技(通常真正面にある舞台をはみ出すくらいの位置)は見えにくい。座席のせいもあって全景が捉えにくかったです。そういうのも含めて、すごく面白い劇場だなあと思いました。本当にここにしかない、特別だよね。
そして肝心の回転は、第一部では想像してたほどでなく。照明の位置が変わることで、あ今回ってるなと思うくらい。それより大画面スクリーンのほうをよく使っていて、拡大からの縮小や上からの下など動きも大きいので画面酔いしそうな感じです。「感じ」なのは、三半規管よわよわ人間、酔いどめ薬を飲んでいったから。心配なら服用したらいいと思います。換気しているせいかわりと冷えるので眠くはなりません。たぶん。それにいろいろ情報が多くて眠くなるどころではない。
そして音響もいつものような圧を感じることがなくて、むしろ台詞のほうが、声でかっとなるくらいよく響いていて、ステアラを使いあぐねているのかなーなんて思っていたら。
思っていたら、第二部になって怒涛の殺陣シーンが始まると、まあ回る回る。それに合わせてがんがん音も上がる。360°殺陣はすごい迫力でした。本当に目が足りない。刀剣男士、時間遡行軍、歴史人物が入り乱れて走り殺陣をしている姿を次々と追い越しつつその全員の姿を見るのは単純に楽しかったです。これがステアラかー!って。
セットはすごく凝っていました。高さのあるセットが多く、どの席からでも見えるような工夫はされてるように思います。ただでさえ移動が多いところ上下にも動くので役者はだいぶ大変そうだけど。
回転殺陣とは別にある、ステ定番の男士それぞれの見せ場殺陣の場面では、謎の斜めが登場。斜めの板?壁?真田丸空堀のイメージなのかなあ?*1なんにせよ維伝のときの動くセットが元になってるのか、人力によって壁とか塀とか攻め手の盾とかになる、この斜めが殺陣の動きをさらに派手にしていて面白かったです。殺陣うま勢には遠慮なく斜めを上らせ、不慣れ勢も上下の動きを取り入れることによってより華やかに見せられるという。これも役者は大変そう。それは絶対そう。

ストーリーについて
OP最後に映像で維伝パンフレットにあったステ年表が出てきて、読めなくなっていた部分が埋まる演出。悲伝の2つ前が天伝で、はい、と思っていたのがのちのち重く伸し掛かることになろうとは。ちょっとー!と思いました。ちょっとすえみつーー!!
キャスパレがすごく洗練されていてかっこいいです。末満さんの提唱するキャストパレードが刀ステでも確立されたなーという感じ。
虚伝のときからすでにそうだし決定打として出されたのが悲伝だったとは思うけど、キャスパレだけじゃなくて物語としても、いよいよ末満さんによる刀剣乱舞ではなく、刀剣乱舞を描いた末満作品になったと思うところもありました。
とにかく情報量が多い。あと夏の陣につづく!過ぎる。
時系列としては悲伝前の、三日月をうしなう前にある本丸から出陣した山姥切たちと、悲伝より先(そして慈伝より先)の時間軸にある本丸からやってきた太閤がいて、二方が大阪冬の陣でまじわる。ジョ伝で見せられたロジックなので、すんなりと納得できるというか理解はしやすいです。いま書いてて思ったけど、長くシリーズが続いてるとこうして使える手の内が増えてくるということだから、末満さんの作品の色が濃くなってくるのも当然なのかもしれない。
時間軸の混線や審神者以外の力で励起される刀、伊達の黒甲冑、朧など、これまでに出てきた要素設定が少しずつよそわれて結果山盛りになって出されたのが天伝でした。
太閤がちらっと漏らしたまだ見ぬ未来の話、山姥切国広は修行に行ったまま戻ってきてない刀であること。が、大問題です。とすると維伝のオクレマンについてもっと考える必要があるのでは…?いやだ!考えたくない!まんばちゃんについて考えたくないことはまだあって、弥助との会話での「失う覚悟はある」とかいう台詞。悲伝以前であるこの天伝で、それを言わせるのはあんまりにもあんまりじゃないですか。
この世を去ってなお暗躍する(けれど彼らにとってはただ抗っているだけの)官兵衛がラスボスの風格があってかっこいいです好き。トップブリーダー官兵衛。官兵衛に限らず、今回の信繁も、蘭丸から始まった今まで出てきた歴史人物たちも、間違いを犯しているのではなく歴史に抗っているだけであり、そして刀剣男士の側にも彼らにそれを強いている自覚があるというのが発見というか気付きを与えられた気持ちです。いやな気付きだけど。ここで虚伝不動くんや鵺ちゃんの言葉が思い出されます。「それがそんなにいけないことなのか」という。
信繁の決断は本当に苦しいけれど、理解できなくもない。かなあ?最悪ではあるけど、ある意味では痛快かも。いや、でも、あまりにもちっぽけではないか人間…という気持ちにもなる。それは弥助にも言えます。ここまで来て、やって、でも駄目なのかって。これは本当にぼんやりとした妄想だけど、いつか刀ステは真伝として本能寺に戻るのかなあ。ところで予告なく大画面に出される織田の刀たちやめてください。心の準備というものがあるんです。不動くんのその顔は!だめでしょ!!
これから始まるはずの江戸時代、長い平和の始まりと終わりとしての家康対清光のシーンがすごく良かったです松田凌をあますことなく使いました、みたいな……とにかくかっこいい。清光が真ん中にいる物語がそう遠くなくあるんだろう、と疑いもなく思ってしまう。ちょうどゲームで特命調査が始まったけど、これ舞台でも見たいなあ!
今まで刀ステのストーリーは、三日月の円環をめぐる物語が一本の縦糸としてあり、歴史上の人物に関わる物語がその都度太い横糸となっていると思っていました。けれど黒田官兵衛の不屈の意思もまた縦糸のひとつなのかもしれない。歴史を守るのが刀の本能。なら、歴史に抗うことが人間の本能なのでは?
天伝は史実の大坂冬の陣と同じく、ただ一時のみ収まった形で夏の陣に続きます。夏の陣の出陣部隊がどこでどう動くかにもよるけど、秀頼と家康は出ないのかなー。どうなるんだろう。でもあの槍と脇差がいるのは決定でしょうね。というか君らどこから来たんだ。
物語を持たない刀は刀剣男士になりえないという設定は、メタっぽさもありつつ、時鳥の太刀のことを考えてしまう。鵺は十分な物語を持つ刀で、犠牲も払われたうえで生まれた存在だった。そして黒甲冑がもし彼(と呼んでいいのか?)独自の行動ではなく協力者がいるとしたら。うーん。
阿形吽形が思いのほか可愛かったです。その存在についてどうこうより可愛いという気持ちが先走るくらいには可愛い。阿吽ぬいが欲しいくらい可愛い。

キャラについて
まず新しい男士について。
松田加州くんがめっちゃ清光。ステ本丸の古株であるらしく、そんなのアンタたちが知らなかっただけでしょ?オレ最初っからいるしーという顔でしれっとまんばちゃんの横に並び立っててとても良かった。殺陣の上手さは知ってたけど、家康と対峙するクライマックスで加州に松田凌を持ってきた意味をしみじみと実感しました。ステアラってやっぱり大きいから演技の強さとか存在感とかが他の劇場より必要なんじゃないかと思うんだけど、そういう心配が全然ない。まんば宗三と一緒にいてもすごく自然。とても良い清光でした。セットに座るとき、絶対手で払ってから座るのすごく清光で好き。
廣瀬さんが一期を穏やかな狂気と評したのを素晴らしいなと思ってるんだけど、本田さんの一期は(というより天伝での一期は)その狂気よりもキャラ説明にある寂しさの面が表に出てる気がします。狂気というよりは不安定さを感じる一期。一幕最後が本当に良くてわりと本気で鳥肌が立ちました。動ける人はどんどん動かそうという方針にのっとり、いち兄もよく動く。側宙をしてたけどさすが本田礼生先生、余裕のありあまるロイヤルな側宙でした。
ずおばみはセットで言いたい。めちゃくちゃ弟感があってかわいかったです。常に一緒にいるけど2人の体型が近くてくつ下並みのセット感。とにかく天伝はステアラ100公演を走り切れる(比喩ではない)体力が最重要だったのではというくらいみんなよく走ってたけどずおばみもめちゃくちゃ動いてた。階段めっちゃ上がる。
太閤くんもかわいかったなー!ゲームより元気がいい。宗三との会話がすごくかわいくて、粟田口が兄と弟たちなのに対してこっちは綺麗なお姉さんと元気な妹(概念)でした。太閤くんがとにかく優しくて、本当に辛いことばかりの物語に息つける場所をくれてありがとうという気持ちです。蒼空だよ、のくだりが天伝の一番の泣きポイントだったな。唯一の短刀なのでたぶん他の刀より余計に走って動いてました。太閤劇場まで任されて…
人間キャストでは信繁が印象的でした。ズッキーの目力すごい。あとは家康様かな人間では弥助の次に刀を振り回し、いちばんに踊ってる。天伝に限らないけどベテラン勢は声がいいなーと思います。
弥助は、本当に弥助頑張ってたな……うちわがあったら「弥助がんばれ」のやつ振ってたな……
だけどやっぱりインパクトは映像出演の官兵衛様が一番強い。末満さんが山浦さんに寄せる信頼の大きさとか、山浦さんという俳優の底知れなさとか、とにかく官兵衛様が綺伝ではない新しい物語にまた登場するだろうというのは疑いないので早くお会いしたいです。

気持ちとしてはもう本当に来月くらいに夏の陣やってくれないかなと思うんだけど、そうもいかない100公演なので、できることなら3月くらいにもう一回観に行きたいところ。三日月の円環は、夏の陣があってそれから悲伝へ続くのだと知ってしまった以上、なんか、なんか絶対すごいじゃないですか。そうでなくても久々の三日月の登場なんだから絶対すごいに決まってるけど……あの大きな舞台の真ん中に立つ鈴木さんを観たら、私はそれだけで泣けてしまうかもしれない。

*1:大河ドラマで得たにわか知識