すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

世界を取り戻す ー舞台『文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱』

文劇3の京都公演が始まりました。
東京公演は配信を2回見ていて、視聴可能時間にアーカイブも繰り返し見たので内容はすっかり頭に入ってます。すごく面白い。
Twitterで感想を探すと地獄とか出てくるし、考察ふせったーも多いし、開幕前の演出家のツイートもいろいろ含みを持っていたので、一体なにが起こっているんだと思われてしまいそうだけど、決してそんな身構えるような作品ではなかったです。
初日に配信を観たとき、少年社中の『トゥーランドット』を思い出しました。奪われないためにたたかう人たちの物語。『トゥーランドット』は「演劇で世界を変える」というあまりにもまっすぐすぎる文言をコピーとして掲げていて、その真っ正直さが私には深く刺さったのだけど、あれから1年と約半年後のいま世界は違った意味で大きく変わってしまって、あのとき舞台で観た劇団員たちの奪われないためのたたかいは、今ではすぐそばにあることに感じられる。文劇3での、客席に向けて叫ばれるある台詞が重なります。
昨日すごく久しぶりに劇場で舞台を観て、取り戻したという感覚がありました。まだ完全にではないけど、でも奪われていたものをここから取り戻せるんだという気持ち。それをずっと取り戻せないままになってしまったひとのことを聞いたとき、すごく寂しく辛かった。そのひとはきっと誰かの世界を変えたことだってあったのに。
文劇3は、そういうメッセージ性はあるけれど、もともとの「文アル」のテーマを思えばそこから逸脱していないし、今だからこその作品というよりはその意味で普遍的な題材を扱っています(と、思います)。きっと観たのが今じゃなくても心に刺さったし、2.5作品としては挑戦的と感じただろうとも思う。そのうえで、私はこの作品を今観ることができて本当に良かったです。できることならもう失いたくないなあ。

劇場に行くのは2月末の『モマ』以来だから、だいたい7ヶ月ぶりくらい。舞台を観るようになってこんなに間が空いたのは初めてで、席について、まだうっすらと暗い舞台に組まれたセットを見たとき、それだけでもう泣きそうになっていました。そして客電が落ちただけでもう泣いた。
配信だけではわからなかった照明や演出、画面外でのキャストの演技、全部が全部、大切なものでした。
あと、推し〜〜〜〜〜!!7ヶ月以上ぶりの生の推し〜〜〜〜〜〜〜!!!という感じです。椎名さんは相変わらずよく動き、表情のひとつひとつ、指先の動きまでが細やかに表現豊かで、悲痛な叫び声でも泣き声でも台詞が聞き取りやすい発声で、よく跳び、よく回し蹴り、凛々しく、最高にかっこよく好きでした。好きでした!!!!好き!!!!!

文劇3は明日、日曜日の公演がマチソワともに配信があります。椎名さんが最高なのはさておいて、キャストの安定感が素晴らしく、舞台など創作物が好きな人には心に刺さる作品だと思います。