すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

好きしか言えない ー『最遊記歌劇伝–Darkness–』

6月になって『COCOON』月・星を観てきたんですが、そのあとすぐに『最遊記歌劇伝』にも行ってきました。

ずっと観たいと願っていた作品をついに観劇できたからか、それとも繭期を飛び出し西へ向かった反動の大きさのせいなのか、いつも以上に興奮がすごい。

まだ公演中ではありますが、あと私が観られるのは配信だけなのでひとまず感想を記しておこうと思います。以下、舞台のネタバレと原作の今後の展開にも触れています。

 

最遊記歌劇伝–Darkness–』

初日は「本物だーー!」とばかり思っていて冷静さはかけらもなかったんだけど、2回目以降少しずつ正気を取り戻し、どうにか物語や舞台周辺についても考えられるようになりました。それでもやっぱりなにより大きいのが嬉しいという気持ち。私は本当に、この作品を観ることができて良かったなあ!とっても幸せです。

原作の最遊記で一番好きな場面は、物語のはじめのはじめ、三蔵が悟空を牢から出すところです。ぽかんとした顔の悟空に、しかめっ面で手を差し出す三蔵。2人の手が繋がれる。外伝を経てからはより一層、物語にとって大きな意味を持つ場面です。

歌劇伝でもそれは同じで、「三蔵が悟空に手を差し出す」ことは毎回OPで象徴的に描かれています。劇中で実際に描かれたのは1作目『Go to the West』と再開後の『Burial』かな。何回見ても同じように涙が出てくるから、そこはもう私はだめなんだと思う。

今回、そのシーンが一度きりじゃなくあって、悟空から手を伸ばすような形でも描かれてました。すごく三蔵と悟空が真ん中に据えられた話になってた気がします。

ヘイゼル篇は今のところ原作で最長のシリーズで 、舞台化が発表されたのはこの『Darkness』と次回の『Oasis』の2作。タイトルや煽り文からも想像はついていたけど、物語としては過程の部分で終わってしまうので、今作だけだとやや消化不良の感があります。起承転結の転までという感じ。ちょうど三蔵のかっこ悪いところというか脆い部分が全開になったとこだし…原作未読でシリーズも初見であるというひとには特に、ピンとこない話だったかもしれません。

なんだけど、上にも書いたように三蔵と悟空の関係性を強く印象づけるような演出がされてて、もちろんキャストの演技は素晴らしかったので、私はとっても楽しかったです!!

三蔵と悟空の関係はなんと言い表せるだろう、と考えます。4人まとめてなら仲間と言えるけど、悟浄と八戒のように親友とは絶対に言えない。金蝉と悟空の疑似親子関係ともちょっと違う。三蔵の言う飼い主とペットというのはあんまりだと思いつつ、でもそんなに間違ってないのかも…お互いがお互いの光である関係。

このエピソードは、その三蔵と悟空が、自分の大事なものを見つめ直す話なんだよね。

 

相変わらず、敵役のお歌が上手でした。ヘイゼル役法月さんはスレイジーを映像で見たことあるくらいだったけど、その記憶よりずっと歌が上手かったです。歌劇伝の、歌は上手い人にどんどん歌わせようどんどん、という吹っ切れ方は結構好きです。とはいえ御一行もずっと上手くなってたと思います。私は悟空のすこんと抜けるような素直な歌声がとても好き。

『Reload』までじゃなく異聞の歌もちゃんと取り入れてくれてたの、すごく良かった。「回顧」の歌詞はほとんどそのまま悟空・悟浄・八戒に当てはめることができるんだなあ。EDは忙しいくらいだったけど、最後「Go to the West」にたどり着いたらそれで全部しっくりまとまってしまうからすごい。

三蔵が悟空と背中合わせになって座ってるのがものすごーく可愛かったです。心のシャッター百万回押した。*1原作の悟空の髪が切れちゃったエピソードの再現なのかな…真っ先にあのシーンを思い出しました。最後の出窓に背中合わせで座る2人。違うかな、どうだろう。

 

お師匠様が相変わらず素敵でした。つくづく歌劇伝は『Reload』でいい方法を思いついちゃったよね…今回も不自然じゃなく欠かせない存在。キセルの灰を落とす動作が本当に美しい…原作のビジュアルに似ていることは必ずしも重要ではない、って三上さんの光明を見ると本当にそうだなあと思います。並べると全然違うのに、でもすっごく光明なの、なんだろうね。それは唐橋さんも遠からず言えることで、別に髪型を寄せてるわけでもないのに、もうすっごくニイだし烏哭。私は原作は読んでるけどアニメは見てないので、原作読んでてもあの声で喋りだしますニイ博士。早く烏哭の本気が見たい。怖いけど見たい。

ヘイゼルとガトは逆にビジュアルからぴったりで、またヘイゼルの歌声が素晴らしかったです。高音きれい。しばらくは一行をお願いしますという気持ち。歌唱力という意味でも。ガトの悟空の身長差も良かった。

三蔵一行。今回限りのピンチヒッターということで、さいねいさんが八戒として出演してくださったこと、本当に本当に感謝しています。でなかったら今このときのこの舞台はなかったかもしれない。心配していた一行感もまったく問題なかったです。悟浄はシリーズ重ねるごとに男っぽさが増していい感じになってきたなー。色気が出たというか…脚はいつ見ても長い。「♪もっと見せてよ」のときの振付けが好きです。耳元でひら〜とするやつ。

悟空はねー、もう、とにかく好きです。としか言えなくなってしまうんだけど、相変わらずわけわかんない高さでのバク宙やその他見応えのあるアクションはもちろんとして、元気いっぱい悟空から金錮を外してからのゾッとするような笑顔まで、どこを切り取っても最高でした。悟空を演じてるのが彼で良かったし、彼の演じる悟空を観ることができて良かった。あと彼は、お芝居が上手い人なんだなあーと改めて思いました。好きです。ひとつの表情、声色に詰め込んだ情報量の多さがさ!好きです!!

三蔵は、鈴木さんの当たり役だなあとつくづく思います。まず声がいいし姿もいい…銃を撃つときに袂を抑えるなどの動作ひとつひとつがすごく三蔵らしい。これはキャストみんなに言えることだけど、舞台上の彼らは何もしていないただ立っているときでも、そのキャラクターらしい佇まいでいる。二次元でしか知らないキャラなのに、彼らは三次元を確かに生きている、と感じます。

あと三蔵と悟空の身長差体格差もとても素晴らしい…

ああ三蔵一行だ〜〜といちばん強く感じたのは、ヘイゼルにいちいちカチンときてるところ。息ぴったりな4人がまあ可愛かったです。上海蟹もタラバも美味しいよ!

 

もう明日が千秋楽です。あと一回。今日の公演は配信で見ることができるので、また細かい感想などは書いておきたいです。

最後に、あまりの尊さに涙を禁じ得なかった椎名さんのツイート。「尊い…」とかあまり使いたくない言葉だわーと常日頃思ってるのに、それでも思わず言ってしまったもんね。ここで使わずいつ使うって思ってしまったもんね…

手を繋ぐ三蔵と悟空の写真です(うさぎ)。

あああああ。

そうなのそれなの!!!それなんだよ!!! さっすがーーーー!!!!

 

*1:オタクだからすぐ心の何かを押しがち

スタートを切る! ー舞台『弱虫ペダル』

個人的に気持ちの下がることはいろいろあれども、実際に見ると「やっぱり大好きだーー!!」と心が大の字になる作品を観てきました。前作からだいたい1年振り。シリーズを見始めてからそれだけの時間が空いたのは初めてで、けれど久しぶりに浴びた熱量に違いは何もなかったです。

「スタートを切る!」と始まったら泣いてしまうパブロフの犬

舞台『弱虫ペダル』新インターハイ篇〜制・限・解・除(リミットブレイカー)〜

タイトル長い。

以下、ネタバレも含む感想です。

 

ペダステ好きだなー、面白いなー。と今回もまた思いました。知ってた!

原作も読んでいますが、ペダステは良くできているなあといつも新鮮に感心するところは、漫画原作が板の上の物語としてきちんと再構築されていることです。アニメでも映像でもできない、舞台だからこその作品になっている。それはペダステの代名詞となっているロードレースにおける演出面だけでなく、原作にあるエピソードを取捨選択して、ときには入れ替えたり挿入したりする脚本の構成力によるところも大きいと思っています。原作のストーリーを順繰りになぞるのではなく、そのときどきに合わせてエピソードを繋げたり切り離したり。

今回で言うと小さな峠の場面。原作では小野田くんがリアルタイムで見ているシーンを回想という形にしていて、これはあとで脚演のシャトナーさんのツイートで気付いたことだけど、それによって巻島と東堂の戦いがインハイでの戦いと本質的に繋がってくる。いわば原作の改変なんだけど、舞台での違和感はありません。このシリーズが今まで培ってきた信頼も大きいのだと思うけど。

いつもある冒頭の回想シーンもそう。毎回毎回、小野田くんの総北入学からを猛スピードで振り返っていて、でもまたかーという気持ちにはならないしなんならその回想だけで泣けてしまうのは、回想であってもこれは絶対というシーンを外さないからだと思う。原作への愛情と深い敬意を感じます。

今作で特に好きだったのがゴール争いのときの歌でした。「勝ちたい  君もそうなのか」みたいな歌詞。ペダルって勝敗に対してはすごくシビアというか、容赦のないところがあって、勝ちたい理由も気持ちも誰も同じだけあることを描くのに、それはそれとしてその都度勝ちと負けの結果ははっきり出てしまう。気持ちが足りなかったから負けたなんてことは絶対になく、なんなら実力が足りなかったわけでもない。ただ勝てなかったという事実があるのみなのです。

鳴子と今泉の関係が本当に、アツいしかっこいいしでたまらなかった…根っこでは信頼しあってるライバルなんて最高に決まってるでしょ!!鳴子くんはペダルで一番かっこいいと思ってるんですが、今泉くんの誇り高さも私はとっても尊いものだと思ってます。最後の最後まで、鳴子くんのかっこよさはとどまることを知らなかったです。

あとはなんといっても、巻島さん東堂さんの1年目インハイ以来の戦いです。

ペダステは今回もキャス変があって、それはもう仕方ないし卒業した先輩たちに至ってはそれはまあそうでしょうねという感じだったんだけど、ファーストリザルトでの踊るような2人のフォーメーションがそのままで、変わってしまっても繋がってるし受け継がれている、いなくなったわけではないんだと感じられて嬉しかったです。巻島東堂に限らず、坂道くんのフォルムとか、ところどころ塗装が禿げてきたハンドルとかも。

これからも、好きという気持ちだけでずっと見守っていけると思いました。観に行って本当に良かった。

ペダステでのお楽しみといえば雑女装ですが、久々にバシ崎兼子に会えて嬉しかったです!今泉親衛隊のDIVAも素敵だったけど、兼子は彼女たちより肉感的なのがまた違った魅力でいいですね!大阪でもドジっ子りょうちゃんと純子に会いたかったよ〜〜。どんどん雑にやってほしい。(でも天羽くんの女装も本気を感じて好きです)

小野田くんのキャス変には不安もあったんですが、糠信さんはすごく安定した坂道くんでした。今までの坂道くんより背が高いせいもあるかな、堂々とした坂道くんっぷりというか、鳴子くん今泉くんとの並びがすごく自然だった。糠信さん、これが初舞台というのも信じられないくらいだけど、これからの活躍も楽しみです。

あとはT2の安心感がもうすごい。鯨井キャップはもうこの舞台の柱と思ってるけど、青八木さんの八島くんも今や欠かせないなあと思います。どうでもいいけど、私鯨井さんの声がすごく好きなんですよね…特に青八木と手嶋が会話する場面での「俺の震えを止めてくれるか」という台詞がまあ色っぽくて聞いてはいけないものを聞いてしまった気になりました。ごめん。

でも一番はやっぱり鳴子くんかな〜〜。贔屓キャラはカブなんだけど。鳴子くんはもうインハイ始まってからずっと、かっこよくない回がないからすごい。最初から最後までかっこよかったです。さくくんのちょっとざらっとした声での台詞回しは、派手さもありつつクールでもあり、鳴子くんの強さ、冷静さ、そしたやっぱりかっこよさが余すことなく詰まってる。鳴子くんが一番かっこいいよ!と心から思います。

そうだ、初めての会場だった浪切ホール、花道演出を観ることができたのは良かったです。端の方の席からでもわりと見やすかったかな。

 

原作では2年目のインハイも決着がつきました。ペダステもなんとかそこまでたどり着いてほしい。次はまだ決まってなさそうだったけど…

一回本物を見てごらんよ!と大きな声で言いたいです。板の上で全力で走る姿、床に落ちる汗の量。スロープが動くだけで道はどこまでも先に延びていく。最小限のセットと、照明と、音楽と、役者の演技だけが舞台上にある。

そういう作品です。

あと最後の最後にはペンラも振れる!

そういう作品ですペダステ!!

 

繭期はじめました

この度めでたく、TRUMPシリーズの一通りの勉強を終えました。

一作品見るごとに膝をつき、顔を覆い、頭を抱え、最後に『グランギニョル』を見た今は床に蹲っています(イメージ)。なんかちょっとだけいい風に終わったけど、その後が『TRUMP』なんでしょう…知ってる、私このあとどうなるのか知ってるんだから……

この一連の物語にファンが多いのも、それはそうでしょうね!と思います。だってこんなのもう、追いかけないではいられない。

地獄というにはあまりにも綺麗で、血を吐くような思いやその場で心を全部持っていかれるような感覚はなかったのだけど、ふとしたとき、なんでもないときに、思い出しては悲しくなってしまいます。あの世界に神様がいるのかわからないけど、どうか神様、と思ってしまう。

どうか彼らにも幸せだったときがありますように、これからの彼らに、心から笑って過ごせるときがせめてひとときでもありますように。そんなことをわりと本気で願ってしまうので、私もそこそこにやべー繭期のようです。

少しだけ冷静な話もしよう。前回の記事で舞台『PSYCHO-PASS』は映像的だったと書いたけれど、TRUMPシリーズは舞台の強みを存分に活かしていて、そこがとてもいいなーと思いました。それぞれ独立した別作品としてやっているからこその演出やキャスティングで、そこがミスリードになっていたり、逆に俳優に寄せて観ることで余計に感情を揺さぶられることもある。たとえば『マリーゴールド』での三津谷さんのような。

あと単純に、ひらひらの衣装すごく素敵です。人を選ぶけれども。

少なくとも推しくん向けではないなーと思ったけど、でも待って、前にアレンみたいな真っ白い衣装でアレンみたいなこと言って女の子口説いてた彼を観たことがある。アレンな彼…すごくいいな…!見たいな!!

全然冷静じゃなかったけど、こうやって「私の最強のTRUMP」みたいなのを妄想するすることができるのは、キャラクターがそれぞれ立っているからこそ。古典作品のように、手を替え品を替えていろんな形で見てみたいです。

物語や演出、俳優の演技など、総合していちばん好みだったのは『グランギニョル』でした。まんまとダリちゃんが好きです。というかあんなの好きになっちゃうに決まってるじゃん!!飄々としてるのに傲慢で、口は悪いのに優しくもあって、家名に縛られたくないと言うのに覚悟は背負ってる。そして顔が染谷さん。好きにならない訳なくない?ダリは別にしても、時系列としてほぼ最初にあたるせいか思わせぶりな伏線がなく、物語としてすっきりまとまっていたように思います。いや『TRUMP』に繋がる伏線はもりもりあるんだけど。最後、物語か祈りで終わるところが好きです。まあその祈りも…という感じなんですけども。ほんと、ほんともう…おのれクラウス……というかすえみつ……

グランギニョル』と『TRUMP』に限らず、シリーズ作品を先に見ているかあとから見るか、もしくは見ないかによって、物語の見え方はだいぶ変わります。その流動的なところもすごくいい、というか嫌だ…もうやだーとなる…けど、面白いです。

グランギニョル』の次は『LILIUM』が好きです。拙さやもどかしさはたくさんあるんだけど、女の子のみだからこそあの息苦しさと緊張感が出せたのだろうと思います。あとアイドルにあれをやらせた末満さんやばいなと思うし見事にやり切った彼女たちもすごいし見せられたファンには心からお疲れさまでしたを言いたい。ちょっとずつ違う衣装がすごく可愛いかった。

そして、刀ステは末満さんの手法で描かれた刀剣乱舞なのだなあと改めて思いました。虚伝なんて燃えるし慟哭もあるしある意味TRUMPでは…?刀ステメンバーでのTRUMP妄想も捗るというもの。なんの制限もなかったら何振り折れてたんだろう。ちょっと見てみたい気もします。

 

そういうわけで、繭期はじめましたのでCOCOONのチケット取りました!

最遊記歌劇伝の前に繭期体験してきます。

 

美徳と罪悪 ー『舞台PSYCHO-PASS 』

元号改まりまして早2週間です。

4月のブログ2回しか書いてない!たぶん薄ミュのディレイ配信とLILIUMを繰り返し観ていたせいです。合間にリンカネも観た。今月はもうちょっと書きたいな。

令和初の観劇にも行ってきましたが、その後発表されたいろんな情報で手一杯になって10日も過ぎてしまいました。

もともと文章を書くのが早いわけではないんだけど。それにしたってこうも書き進まないのはなぜか、他の方の感想を読んだり自分でもよく考えてみて、なんとなく理由がわかった気がします。

 

『舞台PSYCHO-PASS Virtue and Vice』

未視聴だったアニメは、これを機会に第1期のみ観ました(2期も1話だけ観た)。

シビュラシステムに司法権まで明け渡してしまったこの国、あまりに不甲斐ないのでは…というのが真っ先に浮かんだ感想。そして上に書いた理由も結局のところこれなんだと気付きました。すごく単純なことだった。シビュラシステム全然好きじゃないしわりとぽんこつではと思うし理解に苦しむし正直まったく納得できない。

でもこの憤りのような脱力のような感覚は制作側の思惑通りなのかもしれません。それに、だから楽しめなかったということは全然なく、そんな世界で生きるキャラクターでも感情移入はめちゃくちゃにしたし素直に面白かったです。

ほとんど同じことを舞台版に対しても言えます。

シビュラすごい嫌。どうなのあれ。わけわかんない。という嫌悪感はありつつ、三係の面々はすごく愛おしい。楽しくはなかったけど面白い作品でした。物語とはまた別のところで興味深くもあった。ただ、やっぱりそもそもの根幹部分に納得していないので、文句ばっかり出てきそうになるのも本当。

以下、ネタバレも含みます。

正しく、PSYCHO-PASSという作品の一外伝、スピンオフでした。常守朱を主人公とした『PSYCHO-PASS』では語られなかった、とある事件の物語。アニメのどこかに「3係が壊滅状態である」という話が出てくるとちらっと聞いたんですが、自分ではまだ確認していません。でもそれならなおさら、メディアを変えただけのシリーズの一作であるという制作側の意向を感じますね。

興味深かったのは主にこの点です。アニメが原作ではあるけど厳密には2.5次元作品ではない、舞台作品として作られたスピンオフというのは今までにあまりなかった試みなのでは(私が知らないだけかも)。これからはこういうスタンスでの増えてくるのかなーとぼんやりと思いました。

アニメシリーズが好きな人にはぜひ観てほしいけど、逆にアニメを観ていない人向けの内容ではなかったですたぶん。少なくとも、ドミネーターの「リーサルエリミネーター(絶対殺すモード)」「ノンリーサルパラライザー(麻酔で勘弁してやるモード)」の違いがわかるのとわからないのとではだいぶ違うんじゃないかな。

演出はすごく映像的というか、映画を舞台で観ているような感じ。

映像的というのは良くも悪くもで、このまま映像作品に移しても面白さは目減りしなそうだけどいつでも舞台の一箇所で物語が進行していて、なんだかもったいないようにも感じました。目が足りない!という風にはあまりならなかったです。いや、むしろこれはいいことなのか?リアルタイムの映像をプロジェクションマッピングに投影したり、映像的だからこそ面白いという演出もありました。こういう使われ方、前にも何かで観たことがあってそのときも面白いと思ったんだけど、その何かがなんだったのか全然思い出せません…なんだったっけ……

さて内容です。難しかったです。

中国語の部屋」とか「哲学的ゾンビ」とか、一度観たきりでは内容を理解しにくいものがありました。哲学的ゾンビは違う作品でも出てきて、そのときに調べたのでたまたま知ってたけど合わせ技で来られるともうだめ。ただ、そういう言葉や井口先輩の樹脂のカフスボタン、相田の見ていたホログラムの海は全部同じことを指していたのかな。意識は機能に付随しない=本物とは、人間とはなにか、という。この世界は真実でさえ、シビュラシステムに書き換えられてしまう。常守さんがひとつの答えを提示してくれたけど、「それが聞きたかった」じゃねーーーよ!!ほんとクソだなー!!!

三係のキャラクター、みんな魅力的で素敵でした。

九泉の印象がなんかブレるなーと違和感があったんですが後半の種明かしで納得。鈴木さんの演技のきめ細やかさはやっぱりすごい。足癖の悪いチンピラ的なアクションかっこよかったです。そして嘉納の絶望がすべてシビュラによるものなのが、私は本当にこのシステムが憎い…憎い…それだけあのシステムに価値観を支配されているということだから、やっぱりおまえの罪はどこまでも深いぞシビュラめ…と思ってしまいます。九泉に向けて伸ばした手が届かなかったとき、あの大きな目が真っ暗になるのを見てしまっておのれシビュラという気持ちを新たにしました。

あのメンバーで2時間ドラマとか作ってくれないかな。これっきりで終わりなのがあまりにも惜しい人たちで…目白さんがせめてそのときまでは穏やかな日々を過ごせていなかったか、それを見たいです。みんなそれぞれ本当に良かったんだけど、特にというか、個人的にMVPを選ぶなら大城です。大切な人を殺すより、その人に殺されることを選んだ彼が、一体なんの潜在犯だったっていうんだろう。

そして全体的に、スーツでのアクションかっこよすぎるのでこういう作品がもっと増えるといいなと思いました!

あと不満がひとつ。パンフレットはちゃんと用意しておいて!!

 

 

貫き通せ ーミュージカル『薄桜鬼志譚』風間千景篇

京都劇場では今まで2階席しか行ったことがなかったのですが、今回初めて1階に入りました。私の知ってる景色と全然違った。すごく見やすかったです。京都劇場くん、なんで2階に上がった途端舞台があんなに遠くなるのだろう…

 

「ミュージカル『薄桜鬼志譚』風間千景篇」

私にとって二度目の薄ミュ。去年の土方篇に続き、今回もまた満足度の高い作品でした。いいもの観たなーという気持ちです。面白かった!

以下、ネタバレを含む感想です。

京都公演の頃にはもうほとんど葉桜になっていましたが、それでも桜の名残を感じられるこの季節に観れたことを嬉しく思います。

繰り返しますが、とても面白かったです。新しい振付やアレンジ、謎の木など、ところどころおいどうした!?と思ってしまう点はあったけれど、全体の満足度に比べればそんな刺激も美味しいというもの。ヤイサでいきなり黄色のライトが点滅したときは「おっ」と身構えましたが結果的に楽しかったので、あれもありなんじゃないかなダンサブルヤイサ。

薄ミュでは断然土方さん派ですが、今回は風間が本当にかっこよくて。

鬼の頭領としての矜持や信念は揺らぐことなく、でも千鶴ちゃんとの出会いから、風間千景個人の情や優しさが見え隠れするようになる。その波が一番大きくなったのが仙台城で千鶴の背を押したときだったと思うんだけど、あれはすごく良いシーンですね…この風間さん、鬼の里では頭領として敬われつつ、古くから家に仕える年配の女中さんなんかにいまだに若様呼びされて、でもそれを叱るでもなく仕方ないやつだと口では言いながら許してるに違いない…

千秋楽は配信を観たんですが、風間さんの表情に千鶴ちゃんに対する心の変化が表れていて、舞台はもちろん生で見るべきだけど映像の良さってこういうところだなあと実感した次第です。舞台で見ただけのときよりもちー様に可愛げを感じたよ。

とはいえ土方さんです。池田屋での口上がかっこよすぎて涙が出ました。台詞の江戸弁というのかな、語尾に小さい「ぃ」が付いてあがったようになる言い回しがより板についてきて…もう本当にかっこいい。歌もまた上手になったなーと感心しました。

そういうかっこよさとは別に、山崎くんの話聞いてた!?と思ったけど。

今回の山崎さん、土方篇のようなアクロバットな動きはないし、そもそも組長たちほど強くないので殺陣も精一杯な感じでやってるけど、その分羅刹になってからの蹴りの高さや動きの速さが格段にあがっていてさすがでした。

演じる俳優さんを通してまた浮かび上がるものがあるのは、演劇の楽しみのひとつですが、土方と山崎との場面は普段の2人の関係性があるからより胸に迫ってくるように思います。というより、私がそう感じてしまう。

山崎が首を斬られる直前、土方さんに向けて微笑んだのがあまりにも悲しくて最高に良かったです。*1

風間篇は新選組に対しある程度俯瞰的であるせいか、彼らが滅ぶまでの過程がより鮮明になってるような気がします。滅びの道を突っ走るさまを見せられてるというか。山崎さんから始まって、1人ずつ確実に減っていってしまう。

酒宴の場面があとあとで効いてくるよね…

そのとき、確かに彼らには夢と希望があった。そして笑い合っていた。ならば、たとえどれだけ悲惨な最期を迎えても、その人生は決して不幸なものではなかったのでしょう。*2

一人になった土方さんのもとに仲間たちが集まって歌うシーン、土方の「死ぬなーー」を銃声でぶつ切る演出はすごく苦しかったし怖かった*3。でもその乱暴な感じ、放り投げられたような感じは新選組の最後としてふさわしいというか、とてもらしいと感じました。

ちー様かっこいいというのとは別に、どうしても新選組に気持ちを寄せてしまう。

そういえば風間篇だから当然なんだけど、平助とのフラグが折れる瞬間が見えたのがなんかちょっと面白かったです。千鶴と平助はクラスメイトみたいで可愛かったなー。

土方さんと千鶴ちゃんの関係もやっぱり違っていて、土方さんは優しいけどそれはたぶん庇護対象への優しさ、義務感からくるもので。言うなればトリッシュに対するブチャラティ(一部にしかわかりやすくない表現)。酔っているとき過去の話がつい出たのは、千鶴ちゃんに刀や戦とは関係のない日常を感じたからなのかなとも思います。

 

カテコで思う存分いちゃいちゃするカップルが可愛かったです。ダブルカテコで土方さんも仲良く出てくるのも、手繋いでくれない芸するのも微笑ましかった。

そういえば20日は椎名さんが挨拶担当で、素敵なことを仰っていました。

土方さんの台詞がとても好きという話から、 自分たちがやっていることも言ってしまえばまがい物だと。でも本物を届けるつもりで信じて演じているし、それによって泣いたり笑ったりするみなさん(観客)の反応はまがい物なんかじゃないと思う。これからも舞台から本物の感動を届けるという気持ちを貫いて頑張りたい。

というようなお話です。心のいいねボタンは83000回押したよ。

座長に指名されて、ここだよーーと手を振りぴょんぴょん跳ねる32歳かわいい。*4

今回もやっぱり見失いがちだったのでオペラグラスで追うのは早々に諦めました。

 

また桜の季節に見れたらいいな。同じ座組で、次は志譚沖田篇が見たいです!!

 

*1:配信では映ってなかった悲しい

*2:後ろでわちゃわちゃしてるシーン、山崎さんは沖田さんに日によってお酒注がれたり逆に酒瓶奪って一気飲みしたりして、毎回おぼつかない足取りで「うぇっ」としながらはけてた

*3:前の風間篇は歌い終えて直後だったはず

*4:黒いからわかりにくいかと思ってと説明したら小さいからじゃなくて?とツッコまれてた

平成最後の

いよいよ平成の終わりも近付いてきました。

平成最後の観劇予定は薄ミュで、私はそれが楽しみすぎて毎晩「か・ざ・は・な!」と歌う日々を過ごしてますが(またはヤイサ)、それ以外にも予約してた円盤が届いたり、届く予定もあったり、西の地からトーキョーを睨みハンカチ噛んだり、またはチケット申し込んだり予約したり当選したり落選したり、その合間に労働したり、なんだか忙しいです。

年末にさんざん騒いだリンカネのDVDも4月末に届く予定です。今回初めて、公演時にすでに発売が決定していたDVDなので、もしかしたらバクステだって見れてしまうかもしれない…いや、でもどうかな……バクステはともかく、オーディオコメンタリーが入るということでそれも楽しみです。オーコメ大好き。すべての作品に副音声で入ったらいいと思うくらい好き。なので刀映画も(ビジュアルコメンタリーだけど)ものすごく楽しみにしています。

しかし積み円盤が増えてきました。すごーく楽しみにしていて手元に届いたのもすごーく嬉しいのに、すぐに観ないで大事にとっておいてしまうの、あれなんなんだろうね?

 

そんな中ではありますが、推しくんの本を時間をかけてゆっくりじっくり読んでいます。厚さ2.8センチと書いたけど、厚みや重さを減らすために極力薄い紙にしたんだろうなこれ…写真がたくさん載ってる本にありがちな硬い紙じゃなく、ページをめくりやすい柔らかめの紙。

9年間って短いようでやっぱり長い。9年の間には、ぽつりぽつりと私の知ってる出来事もあって、それを挟んでたくさんの知らない出来事がある。そして、当時これ見たなあとか、こんなことあったのかーとか思いながら、今現在の私はその全部を取り零さないように1日ずつ追っている。9年前どころか去年の今時点の私も、平成の終わりにこんなに彼を好きになってるとは考えもしなかったなあ…ありがたいような不思議なような、面白い感覚。なんにせよ楽しく過ごせて良かったね、私!

その時の舞台やその他お仕事について全部書いてあって、改めて、色々やってるなあと思います。2.5作品が後半になるにつれ増えたのは、彼の仕事の傾向というより舞台全般に増えたということなんだろうな。

そして顔は全然変わらない。子どもみたいに笑うなーと、2010年と今と同じ笑顔に心の中で手を合わせています。この笑顔のある世界にありがとうを言おう…

そんな、平成最後の1ヶ月。

 

平成最後の観劇は薄ミュですが、令和最初の観劇はPSYCHO-PASSです。アニメ見ておかなきゃ難しいかな。

 

つれづれなる

舞台上で推しが死ぬ姿を見たことがある人、少なくないと思うんですが、私自身は、推します!と思ってからはまだ見たことがありません。でもそれ以前の舞台では何度か、去年だけでも2回見ました。1回はifストーリー的な設定ではあったけど。

舞台の上での死って、よほどの犬死にでもない限りそのキャラクターの見せ場でもあるし、だいたいの場合カテコで元気に挨拶してくれるので、安心して楽しめてしまいます。彼の痛い演技や死ぬ演技が好きです。というと語弊があるけど、前回にも書いた必死な声、切な声が好きの延長なのだと思う。役者仲間にさえ声でけぇと言われる彼の、振り絞った声(という演技)には特別感がある気がする。でも「天下無敵の忍び道」の勢いのある死も好きだよ…あれは誰より演じる彼が楽しそう。

ともかく、そういう演技をすごく上手いなーと思ってるので去年の2回はいいもの見たくらいの気持ちだったんですが、来月の舞台で推しを推しと認識して初めて彼が死ぬ姿を目の当たりにすることになりそうで、それはちょっとドキドキしています。去年の同じ頃、山崎さんを抱きかかえた土方さんの口が「やまざき」と動いたのをオペラで見てわっと泣いてしまったので、来月もオペラグラスは忘れないようにしよう。

 

こうして来月の舞台を楽しみにしてる反面、刀ステの新キャストが発表されて鬱々とした気持ちにもなっています。

なにあれ。

なにあれ。

もういろんなところでいろんな人が言ってるから言わないけど、でもなにあれ!!

私はもちろん兵庫公演に狙いを定めて毎日毎夜1000回の素振り(概念)を欠かさずすることにしましたが、神さまにも祈ってます。チケット取れますように!!

あと神戸アイアとやらの座席数がオリエンタル劇場時代より増えますように…でも椅子はオリエンタルのそのままでいい…でも増えて…あと座席表示は普通に前からA〜にしてね…

 

椎名さんの本が出ました。

B5変形版厚さ2.8センチ(私調べ)の立派な本です。9年間のブログ記事が全部じゃないけど収録されていて、仲間の俳優さんたちの写真なども一緒に載っています。たくさん。

9年間、彼はたくさんの仕事をしてきて、たくさんの人と出会ってる。私が触れられたのはその中のごく一部だけれど、今現在の彼を作っているのはその積み重ねた年月でもあるのだから、それは決して私の知らない9年間ではないんだなあ。と、思いながら大事にページをめくっています。当然彼の周辺に限ったことですが、時代の変化というか2.5舞台界隈(というか若手俳優、私たちが応援する俳優たちの界隈)の変化も見れるようで、その意味でもすごく面白いです。

買って!!!ね!!!!!(力いっぱいのダイレクトマーケティング