すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

美徳と罪悪 ー『舞台PSYCHO-PASS 』

元号改まりまして早2週間です。

4月のブログ2回しか書いてない!たぶん薄ミュのディレイ配信とLILIUMを繰り返し観ていたせいです。合間にリンカネも観た。今月はもうちょっと書きたいな。

令和初の観劇にも行ってきましたが、その後発表されたいろんな情報で手一杯になって10日も過ぎてしまいました。

もともと文章を書くのが早いわけではないんだけど。それにしたってこうも書き進まないのはなぜか、他の方の感想を読んだり自分でもよく考えてみて、なんとなく理由がわかった気がします。

 

『舞台PSYCHO-PASS Virtue and Vice』

未視聴だったアニメは、これを機会に第1期のみ観ました(2期も1話だけ観た)。

シビュラシステムに司法権まで明け渡してしまったこの国、あまりに不甲斐ないのでは…というのが真っ先に浮かんだ感想。そして上に書いた理由も結局のところこれなんだと気付きました。すごく単純なことだった。シビュラシステム全然好きじゃないしわりとぽんこつではと思うし理解に苦しむし正直まったく納得できない。

でもこの憤りのような脱力のような感覚は制作側の思惑通りなのかもしれません。それに、だから楽しめなかったということは全然なく、そんな世界で生きるキャラクターでも感情移入はめちゃくちゃにしたし素直に面白かったです。

ほとんど同じことを舞台版に対しても言えます。

シビュラすごい嫌。どうなのあれ。わけわかんない。という嫌悪感はありつつ、三係の面々はすごく愛おしい。楽しくはなかったけど面白い作品でした。物語とはまた別のところで興味深くもあった。ただ、やっぱりそもそもの根幹部分に納得していないので、文句ばっかり出てきそうになるのも本当。

以下、ネタバレも含みます。

正しく、PSYCHO-PASSという作品の一外伝、スピンオフでした。常守朱を主人公とした『PSYCHO-PASS』では語られなかった、とある事件の物語。アニメのどこかに「3係が壊滅状態である」という話が出てくるとちらっと聞いたんですが、自分ではまだ確認していません。でもそれならなおさら、メディアを変えただけのシリーズの一作であるという制作側の意向を感じますね。

興味深かったのは主にこの点です。アニメが原作ではあるけど厳密には2.5次元作品ではない、舞台作品として作られたスピンオフというのは今までにあまりなかった試みなのでは(私が知らないだけかも)。これからはこういうスタンスでの増えてくるのかなーとぼんやりと思いました。

アニメシリーズが好きな人にはぜひ観てほしいけど、逆にアニメを観ていない人向けの内容ではなかったですたぶん。少なくとも、ドミネーターの「リーサルエリミネーター(絶対殺すモード)」「ノンリーサルパラライザー(麻酔で勘弁してやるモード)」の違いがわかるのとわからないのとではだいぶ違うんじゃないかな。

演出はすごく映像的というか、映画を舞台で観ているような感じ。

映像的というのは良くも悪くもで、このまま映像作品に移しても面白さは目減りしなそうだけどいつでも舞台の一箇所で物語が進行していて、なんだかもったいないようにも感じました。目が足りない!という風にはあまりならなかったです。いや、むしろこれはいいことなのか?リアルタイムの映像をプロジェクションマッピングに投影したり、映像的だからこそ面白いという演出もありました。こういう使われ方、前にも何かで観たことがあってそのときも面白いと思ったんだけど、その何かがなんだったのか全然思い出せません…なんだったっけ……

さて内容です。難しかったです。

中国語の部屋」とか「哲学的ゾンビ」とか、一度観たきりでは内容を理解しにくいものがありました。哲学的ゾンビは違う作品でも出てきて、そのときに調べたのでたまたま知ってたけど合わせ技で来られるともうだめ。ただ、そういう言葉や井口先輩の樹脂のカフスボタン、相田の見ていたホログラムの海は全部同じことを指していたのかな。意識は機能に付随しない=本物とは、人間とはなにか、という。この世界は真実でさえ、シビュラシステムに書き換えられてしまう。常守さんがひとつの答えを提示してくれたけど、「それが聞きたかった」じゃねーーーよ!!ほんとクソだなー!!!

三係のキャラクター、みんな魅力的で素敵でした。

九泉の印象がなんかブレるなーと違和感があったんですが後半の種明かしで納得。鈴木さんの演技のきめ細やかさはやっぱりすごい。足癖の悪いチンピラ的なアクションかっこよかったです。そして嘉納の絶望がすべてシビュラによるものなのが、私は本当にこのシステムが憎い…憎い…それだけあのシステムに価値観を支配されているということだから、やっぱりおまえの罪はどこまでも深いぞシビュラめ…と思ってしまいます。九泉に向けて伸ばした手が届かなかったとき、あの大きな目が真っ暗になるのを見てしまっておのれシビュラという気持ちを新たにしました。

あのメンバーで2時間ドラマとか作ってくれないかな。これっきりで終わりなのがあまりにも惜しい人たちで…目白さんがせめてそのときまでは穏やかな日々を過ごせていなかったか、それを見たいです。みんなそれぞれ本当に良かったんだけど、特にというか、個人的にMVPを選ぶなら大城です。大切な人を殺すより、その人に殺されることを選んだ彼が、一体なんの潜在犯だったっていうんだろう。

そして全体的に、スーツでのアクションかっこよすぎるのでこういう作品がもっと増えるといいなと思いました!

あと不満がひとつ。パンフレットはちゃんと用意しておいて!!