すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

映画刀剣乱舞を観たよ(ネタバレあり)その1

公開初日と次の日と、今のところ2回観ました。

すっごく!面白かったよ!!

刀剣乱舞の実写映画版として、奇を衒いすぎず真っ向勝負をした、間口の広い作品になってるんじゃないかなーと思います。もっと特撮色の濃い、ファンタジーやSF要素の強い作品を想像していたら、地に足の着いた刀剣乱舞だからこそ描ける歴史ミステリー作品だった。かといって難解ではなく、物語の道筋はシンプルでわかりやすい。あとこれまたシンプルに、刀剣男士が美しいしかっこいい。

あとアツい!脚本の小林さんが「萌えはないけど燃えはある」と仰っていた通り、そりゃあ西川のアニキだって歌うわという胸熱展開でした。

ゲームのファンとして、あとは出演する俳優さんのファンとして、良い作品になったことが素直に嬉しいです。

以下、ネタバレもしてる感想です。

 

▽物語について 

地に足の着いたという印象は、これほぼ山本さんと八嶋さんのおかげだと思います。二人揃ったシーンはないものの、どちらかが画面にいるだけで、あれ、これ大河かな?っていう重厚感が確かにありました。冒頭の本能寺で信長が蘭丸に「大儀であった」と言うとこなんて、最終回のクライマックスくらいの迫力です。八嶋さんの秀吉は特にすごく刺さってしまって、本当に素敵でした。愛嬌と狂気とか情の深さと酷薄さとか、矛盾がひとつの人格に違和感なく溶け込んでいて、赤尻を見せたすぐ後なのにあんなに怖い。

そういう、一見大河ドラマにいそうな信長・秀吉に対し、若くてきらきらしてなんかトンチキな格好した刀剣男士というのは明らかに異質な存在として目に映ります。でも不自然に浮いているわけじゃなくて、ああこれが刀剣男士のいる世界なんだと納得する感じ。映画そのものの説得力を感じます。

ミステリー部分に関して。誰もが知っている本能寺の変と、これまでに何度となく描かれてきたその謎に真っ向から立ち向かったのもすごいし、ちゃんと筋道通った答えを差し出してくれたことも、そしてその答えが刀剣男士だからこそ知り得たというこの映画の根拠を示してくれたこともすごい。

・本能寺で信長とともに炎の中に消えた薬研

・将軍家から下賜され秀吉のもとにあった三日月

この二振りが同時に「安土城」とつぶやく場面の心の盛り上がりが大変です。カタルシスがある作品はやっぱりいいなー!面白い〜と素直に思います。

骨喰の登場で「焼けて記憶がない刀」というカードを出しておくのもうまい。そこで不動に関して思ったことがあるのですが、それはあとに回します。

無銘くんの真の姿が明らかになったところでは、映画館全体が「えっ…」ってなってたのが面白かったです。誰!?とも思ったけど、ドロップの表現というのはわりとすんなりと理解できました。なるほどねー。いやでもやっぱり誰!?てなるな…

 

▽映画本丸のこと

これはものすごく個人的な感想だけど、あらゆるメディアミックス本丸で、私はこの本丸が一番好きです。信頼と優しさからなるとても良い本丸だと思います。

全体的にレベル高め。すごくいいなあと思ったのは(そして泣くのは)、不動くんへの対応です。本能寺で奥の間へ行かせない三日月、出陣から戻って甘酒飲む不動に対し(祝い酒と言うけどあれは絶対辛い記憶から逃げるための酒でしょう)、鶯丸は一度は嗜めるけど三日月に目配せされてからはもう何も言わず、日本号は調子を合わせてくれる。寝てしまったら薬研が上掛けかけてくれる。とにかくみんな優しいし、不動を信頼してる。不動は不動でその信頼に応えていて、虚伝で何も受け入れられずに泣き喚く姿を思い出すと涙が出ます…。映画本丸でも顕現したてのころは大変だったんだろうけど。ちょっと疑似家族のようなところのある本丸かもしれない。

審神者があんなにしっかり登場するのは意外でした。でも審神者と三日月の関係とても良かった…きっと長い長い付き合いなんだろうというのが気取らない会話の端々から取れるし、同時に主従の線引きもきっちりある。

三日月を迎えに行ったときにかぶさる審神者の台詞「なすべきことはまだあるよ」が好きです。ある。でもあるぞ。でもなく、あるよって言い方は、三日月とおじいちゃん審神者の関係の柔らかさを表すようで、いいなあと思いました。代替わりというシステムは単純に面白いと思う反面、闇を感じ取れなくもないので深く考えずにさらっと流したい…あっこれは個人的な印象ですが、あの世界の本丸は唯一のものっぽいなあ。同次元に本丸はただ一つの世界。

そしてまさかの幼女審神者の登場でした。文句なしに小さくかわいいものが登場してびっくり。他の刀がずらっと揃い、それがステキャストだったことにもわあってなってたんだけど、審神者ちゃんのあまりの可愛さに吹っ飛んでしまった。不動くんと同じ顔になってた気がします。ところであの不動の笑顔、パアァッ!という効果音が目に見えるようで最高だよね。

そして刀剣男士が揃って居ずまいを正し一礼。最後に初めて明らかになるサブタイトル《継承》。かっカッコいい〜!好き〜〜!!オタクだからああいうの大好き!!

映像ならではの演出として、そこかしこで装備を解いてくつろいだ状態の男士たちを見れたのが嬉しかったです。籠手のない鶯丸とかストラのない長谷部とか、ジャケットの袖口見えてる不動とかとても好きなので、あの状態の写真がもっと欲しいよ~~。

本丸でのことじゃないけどジャケットオフのまんばちゃんと薬研も最高でした。学園刀剣乱舞だ…!

 

▽三日月と不動の記憶

不動も信長が本能寺から逃げ延びたことを知ってるのでは、と思ったので考えをまとめてみます。

三日月が秀吉の元にあったから真実を知っているとするなら、不動もまた蘭丸の最後の行動を知っているはず。今思うと蘭丸くんは殊更に不動(本体)を主張していた…そしてさらに考えると、ストーリー中、その本体の名を呼ばれたのって不動、三日月、薬研だけだった。信長の最後(最期ではなく歴史的な意味での最後)に立ち会い、正しい歴史の道筋を知ってる刀たち。

整理しておきたいのがこの映画における本当の歴史について。本能寺の変で刀剣男士が守るべき歴史は、歴史上における信長の消息は本能寺で途絶えたというところまでなのだと思う。何故かって信長の遺体は見つかってないのだから。信長が奥の間にいる状態で本能寺が焼け落ちれば、そこで歴史上から彼の存在が消えれば、それで任務完了で良かった。

不動は蘭丸が信長を逃がしたことを知ってるけど、だからといってその後の信長は表舞台には出てこないのだから歴史的には死んだも同然です。わざわざ言わないのは知られていない歴史なら大っぴらにはできないという三日月と同じ判断か、それとももっと感情的なものからか。想像しかできないけど、前者もありつつ、不動にとって大切にしまっておきたい宝物だったからではないのかなあ。蘭丸が命を懸けて成したことだもの。「あそこで死ぬべきやつはみんな死んだ」という台詞も説得力が増します。「信長様」を「やつ」と呼ぶ中には含まないだろうとか、間違いないと断言したこととか。それが不動に言える、嘘のない精一杯だったんだろうな。

また、おじいちゃん審神者が三日月との会話で「まさか信長が生き延びていたとは…」と言ってるけど、これは時間遡行軍によって生き延びたという意味でなく、三日月から聞かされた真実のことを言ってるのでしょう。生き延びたところまでは正しい歴史、じゃあ正さなくてはいけないのは、生き延びた信長に時間遡行軍が接触したところからなのだと思う。あの審神者レーダーみたいのはその部分に反応したのではないかな…

って考えると、本能寺での三日月と不動の無言の会話にも更なる意味が出てくるのでは。自分も信長がここを生き延びたことを知っていると目線で言い聞かせる三日月と、それを受け取った不動なのでは…?

次はそういう目で見てみようと思います。

 

長くなってしまったのでキャラについては次に続きます。