すとんと刺さる

ゆるいおたくのよしなしごと

本能とは ー舞台『刀剣乱舞』天伝 蒼空の兵-大坂冬の陣-

2021年の観劇初めは刀ステです。先月から関東住まいになったので観劇やイベント予定を入れています。こんな状況ではありますが、上演されるなら元気に観劇したい。
というわけで私にとっては初めてのステージアラウンドに行ってきました。
ほんとにまわった!!!

以下、ネタバレしてます。

劇場について
思ってたほど関東荒野ではなかった(髑髏城レポをたくさん読んできた人間のステアラの印象)。劇場内の至るところに消毒液がおいてあって、入場時以外でもトイレのあとなどシュッとするのに便利でした。
トイレは日によるのだろうけど男性用も開放していて、結構な列にもかかわらず余裕の回転率。物販利用するとなると急がなきゃならないかも。
席は前方下手寄り。すごく見易い場所だったけど、それでも上手での演技(通常真正面にある舞台をはみ出すくらいの位置)は見えにくい。座席のせいもあって全景が捉えにくかったです。そういうのも含めて、すごく面白い劇場だなあと思いました。本当にここにしかない、特別だよね。
そして肝心の回転は、第一部では想像してたほどでなく。照明の位置が変わることで、あ今回ってるなと思うくらい。それより大画面スクリーンのほうをよく使っていて、拡大からの縮小や上からの下など動きも大きいので画面酔いしそうな感じです。「感じ」なのは、三半規管よわよわ人間、酔いどめ薬を飲んでいったから。心配なら服用したらいいと思います。換気しているせいかわりと冷えるので眠くはなりません。たぶん。それにいろいろ情報が多くて眠くなるどころではない。
そして音響もいつものような圧を感じることがなくて、むしろ台詞のほうが、声でかっとなるくらいよく響いていて、ステアラを使いあぐねているのかなーなんて思っていたら。
思っていたら、第二部になって怒涛の殺陣シーンが始まると、まあ回る回る。それに合わせてがんがん音も上がる。360°殺陣はすごい迫力でした。本当に目が足りない。刀剣男士、時間遡行軍、歴史人物が入り乱れて走り殺陣をしている姿を次々と追い越しつつその全員の姿を見るのは単純に楽しかったです。これがステアラかー!って。
セットはすごく凝っていました。高さのあるセットが多く、どの席からでも見えるような工夫はされてるように思います。ただでさえ移動が多いところ上下にも動くので役者はだいぶ大変そうだけど。
回転殺陣とは別にある、ステ定番の男士それぞれの見せ場殺陣の場面では、謎の斜めが登場。斜めの板?壁?真田丸空堀のイメージなのかなあ?*1なんにせよ維伝のときの動くセットが元になってるのか、人力によって壁とか塀とか攻め手の盾とかになる、この斜めが殺陣の動きをさらに派手にしていて面白かったです。殺陣うま勢には遠慮なく斜めを上らせ、不慣れ勢も上下の動きを取り入れることによってより華やかに見せられるという。これも役者は大変そう。それは絶対そう。

ストーリーについて
OP最後に映像で維伝パンフレットにあったステ年表が出てきて、読めなくなっていた部分が埋まる演出。悲伝の2つ前が天伝で、はい、と思っていたのがのちのち重く伸し掛かることになろうとは。ちょっとー!と思いました。ちょっとすえみつーー!!
キャスパレがすごく洗練されていてかっこいいです。末満さんの提唱するキャストパレードが刀ステでも確立されたなーという感じ。
虚伝のときからすでにそうだし決定打として出されたのが悲伝だったとは思うけど、キャスパレだけじゃなくて物語としても、いよいよ末満さんによる刀剣乱舞ではなく、刀剣乱舞を描いた末満作品になったと思うところもありました。
とにかく情報量が多い。あと夏の陣につづく!過ぎる。
時系列としては悲伝前の、三日月をうしなう前にある本丸から出陣した山姥切たちと、悲伝より先(そして慈伝より先)の時間軸にある本丸からやってきた太閤がいて、二方が大阪冬の陣でまじわる。ジョ伝で見せられたロジックなので、すんなりと納得できるというか理解はしやすいです。いま書いてて思ったけど、長くシリーズが続いてるとこうして使える手の内が増えてくるということだから、末満さんの作品の色が濃くなってくるのも当然なのかもしれない。
時間軸の混線や審神者以外の力で励起される刀、伊達の黒甲冑、朧など、これまでに出てきた要素設定が少しずつよそわれて結果山盛りになって出されたのが天伝でした。
太閤がちらっと漏らしたまだ見ぬ未来の話、山姥切国広は修行に行ったまま戻ってきてない刀であること。が、大問題です。とすると維伝のオクレマンについてもっと考える必要があるのでは…?いやだ!考えたくない!まんばちゃんについて考えたくないことはまだあって、弥助との会話での「失う覚悟はある」とかいう台詞。悲伝以前であるこの天伝で、それを言わせるのはあんまりにもあんまりじゃないですか。
この世を去ってなお暗躍する(けれど彼らにとってはただ抗っているだけの)官兵衛がラスボスの風格があってかっこいいです好き。トップブリーダー官兵衛。官兵衛に限らず、今回の信繁も、蘭丸から始まった今まで出てきた歴史人物たちも、間違いを犯しているのではなく歴史に抗っているだけであり、そして刀剣男士の側にも彼らにそれを強いている自覚があるというのが発見というか気付きを与えられた気持ちです。いやな気付きだけど。ここで虚伝不動くんや鵺ちゃんの言葉が思い出されます。「それがそんなにいけないことなのか」という。
信繁の決断は本当に苦しいけれど、理解できなくもない。かなあ?最悪ではあるけど、ある意味では痛快かも。いや、でも、あまりにもちっぽけではないか人間…という気持ちにもなる。それは弥助にも言えます。ここまで来て、やって、でも駄目なのかって。これは本当にぼんやりとした妄想だけど、いつか刀ステは真伝として本能寺に戻るのかなあ。ところで予告なく大画面に出される織田の刀たちやめてください。心の準備というものがあるんです。不動くんのその顔は!だめでしょ!!
これから始まるはずの江戸時代、長い平和の始まりと終わりとしての家康対清光のシーンがすごく良かったです松田凌をあますことなく使いました、みたいな……とにかくかっこいい。清光が真ん中にいる物語がそう遠くなくあるんだろう、と疑いもなく思ってしまう。ちょうどゲームで特命調査が始まったけど、これ舞台でも見たいなあ!
今まで刀ステのストーリーは、三日月の円環をめぐる物語が一本の縦糸としてあり、歴史上の人物に関わる物語がその都度太い横糸となっていると思っていました。けれど黒田官兵衛の不屈の意思もまた縦糸のひとつなのかもしれない。歴史を守るのが刀の本能。なら、歴史に抗うことが人間の本能なのでは?
天伝は史実の大坂冬の陣と同じく、ただ一時のみ収まった形で夏の陣に続きます。夏の陣の出陣部隊がどこでどう動くかにもよるけど、秀頼と家康は出ないのかなー。どうなるんだろう。でもあの槍と脇差がいるのは決定でしょうね。というか君らどこから来たんだ。
物語を持たない刀は刀剣男士になりえないという設定は、メタっぽさもありつつ、時鳥の太刀のことを考えてしまう。鵺は十分な物語を持つ刀で、犠牲も払われたうえで生まれた存在だった。そして黒甲冑がもし彼(と呼んでいいのか?)独自の行動ではなく協力者がいるとしたら。うーん。
阿形吽形が思いのほか可愛かったです。その存在についてどうこうより可愛いという気持ちが先走るくらいには可愛い。阿吽ぬいが欲しいくらい可愛い。

キャラについて
まず新しい男士について。
松田加州くんがめっちゃ清光。ステ本丸の古株であるらしく、そんなのアンタたちが知らなかっただけでしょ?オレ最初っからいるしーという顔でしれっとまんばちゃんの横に並び立っててとても良かった。殺陣の上手さは知ってたけど、家康と対峙するクライマックスで加州に松田凌を持ってきた意味をしみじみと実感しました。ステアラってやっぱり大きいから演技の強さとか存在感とかが他の劇場より必要なんじゃないかと思うんだけど、そういう心配が全然ない。まんば宗三と一緒にいてもすごく自然。とても良い清光でした。セットに座るとき、絶対手で払ってから座るのすごく清光で好き。
廣瀬さんが一期を穏やかな狂気と評したのを素晴らしいなと思ってるんだけど、本田さんの一期は(というより天伝での一期は)その狂気よりもキャラ説明にある寂しさの面が表に出てる気がします。狂気というよりは不安定さを感じる一期。一幕最後が本当に良くてわりと本気で鳥肌が立ちました。動ける人はどんどん動かそうという方針にのっとり、いち兄もよく動く。側宙をしてたけどさすが本田礼生先生、余裕のありあまるロイヤルな側宙でした。
ずおばみはセットで言いたい。めちゃくちゃ弟感があってかわいかったです。常に一緒にいるけど2人の体型が近くてくつ下並みのセット感。とにかく天伝はステアラ100公演を走り切れる(比喩ではない)体力が最重要だったのではというくらいみんなよく走ってたけどずおばみもめちゃくちゃ動いてた。階段めっちゃ上がる。
太閤くんもかわいかったなー!ゲームより元気がいい。宗三との会話がすごくかわいくて、粟田口が兄と弟たちなのに対してこっちは綺麗なお姉さんと元気な妹(概念)でした。太閤くんがとにかく優しくて、本当に辛いことばかりの物語に息つける場所をくれてありがとうという気持ちです。蒼空だよ、のくだりが天伝の一番の泣きポイントだったな。唯一の短刀なのでたぶん他の刀より余計に走って動いてました。太閤劇場まで任されて…
人間キャストでは信繁が印象的でした。ズッキーの目力すごい。あとは家康様かな人間では弥助の次に刀を振り回し、いちばんに踊ってる。天伝に限らないけどベテラン勢は声がいいなーと思います。
弥助は、本当に弥助頑張ってたな……うちわがあったら「弥助がんばれ」のやつ振ってたな……
だけどやっぱりインパクトは映像出演の官兵衛様が一番強い。末満さんが山浦さんに寄せる信頼の大きさとか、山浦さんという俳優の底知れなさとか、とにかく官兵衛様が綺伝ではない新しい物語にまた登場するだろうというのは疑いないので早くお会いしたいです。

気持ちとしてはもう本当に来月くらいに夏の陣やってくれないかなと思うんだけど、そうもいかない100公演なので、できることなら3月くらいにもう一回観に行きたいところ。三日月の円環は、夏の陣があってそれから悲伝へ続くのだと知ってしまった以上、なんか、なんか絶対すごいじゃないですか。そうでなくても久々の三日月の登場なんだから絶対すごいに決まってるけど……あの大きな舞台の真ん中に立つ鈴木さんを観たら、私はそれだけで泣けてしまうかもしれない。

*1:大河ドラマで得たにわか知識

2020年

今年がもうすぐ終わります。一体なんだったんだろう、2020年。と来年は言えるようになっていたらいいけど、この混乱はまだしばらくは続くのだろうなあとも思います。そうはいっても今年は終わるし2021年はやってくるのでまとめを書きにきました。
今年がどれだけ大変で苦しかったか、改めて言うまでもないことなのでもう書かないけど、でもとりあえず一年お疲れさまでしたの気持ちです。そこからまた大変さはすこしも薄れずに(むしろ増しましになり)新たに始まるのだけど。とにかく自分にできることをしっかりやって日々を過ごしていく所存です。

思えば私の場合、もともとそんなにいろいろな舞台を見るほうではなかったので、払い戻しになったチケットはそこまで多くはありませんでした。薄ミュとペダステ、『アルキメデスの大戦』くらい。それがラッキーだったとは全然思わないけど、でも持っているチケットが無効になる経験は、たぶん少なければ少ないほうがいい。たぶん。個人レベルの話で、コロナ禍で一番影響があったのはすっかり腰が重くなってしまったことです。ちょっと気になる、ちょっと見てみたい、くらいの気持ちから行動に移すまでの壁がすごく高くなってしまった。直近で気持ちを引きずってるのが年末スペゼロ!なんで行かなかったんだろう…もう言っても仕方ないことだけど……でもなんか動けなかったの……来年の目標、ブログを定期的に書くことと、あとは腰を軽くする(?)ことにしたい。

2020年のまとめ

・2月
最遊記歌劇伝-Oasis-』

mmm11.hatenablog.com

mmm11.hatenablog.com
客席でのマスク着用が求められていただけで、まだ入り口の消毒液もなかったころ。2月はOasisに狂っていたと言っても過言ではない。本当に、予定通りの公演ができて、それを観劇できて良かったです。

少年社中『モマの火星探検記』

mmm11.hatenablog.com良い子のための少年社中だった。素直に、いい作品だなと思います。先日あった企画用プロモーションでメインテーマを聞いてとても気分があがりました。

『舞台「弱虫ペダル」新インターハイ篇FINAL〜POWER OF BIKE』
2年目のインターハイ決着。予定通り行われるかどうかの瀬戸際でした。言い方は悪いけれどよく逃げ切った。大好きなのに心情的な折り合いをつけるのにいつも苦労する、一方的な愛憎関係にある作品ですが、ここまで来れたことには素直に感謝しています。実際に観たら泣いてしまうし最高に面白いんだものな…2年目はとにかく鯨井キャップでした。原作より圧倒的強そうで頼りがいがあってできる男で、でも原作通りの弱さ繊細さもあった。彼以外の手嶋はもう考えられないし、誰より魅力的でかっこよかったです好き。

・3月/4月/5月/6月
ほぼ記憶がありません。なにを…してた……??リモート演劇なるものが増えてきていたけど、ほとんど関わりなく過ぎていってしまいました。あ、配信劇の『12人の優しい日本人』を観た。脚本と役者の腕力に鷲掴みされるような作品でした。面白いと集中力もそんなに切れない。
あと5月は刀ステの一挙無料配信があったな…みんなでわいわいと観れる感じは楽しかったです。俳優さんも過去をさかのぼったツイートしてくれたり。椎名さんも当時を振り返ったブログを書いてくれて嬉しかった。

・7月
ひとりしばい『ひとりシャドウストライカー、またはセカンドトップ、または、ラインブレイカー』
そろそろコダマみたいな顔で過ごすことに飽きてきた7月に観た作品。配信のみでの演劇として作られていたので、カメラワークも凝っていて見応えありました。配信だったけどすごく演劇を観たなーという満足感があった。何より西田さんの役者への信頼感?やれんだろっていう煽り感?や、この役者のいいところ全部知ってるしという演出、それに見事に応える役者(とびきり美しい)という構図が好きでした。

科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝いくさ世の徒花 改変いくさ世の徒花の記憶
初めて正式タイトルを書いた。これも配信視聴。舞台上での徹底したソーシャルディスタンスとマウスシールドに意地を見ました。必要に迫られた結果の苦肉の策だったのかもしれないけど、講談師がいる刀ステ、とっても新鮮で好きでした。なんなら他でもいて欲しいし、でなかったらPV作って欲しい。慈伝では気の毒なところもあった長義くんがかっこよかったです。やっぱり長義はあの居丈高さあってこそだよ。それと良かったのは獅子王くん。ただ元気っこなだけじゃなく、古い刀らしい鷹揚さと度量があるの解釈一致という感じでした。たぶん純粋な面白さというなら、殺陣があって実際に手を取り合える、科白劇ではない通常の舞台のほうが面白いに決まってるけど、コロナ禍での刀ステを(方方から文句を言わせない形で)上演するにあたって、この科白劇が出てくるのがすごいし強い。そして、本来の形での綺伝が発表されましたね。楽しみです。

「鯛フェス」伍祭目配信
現場には残念ながら行けず、でも初の配信をしてくれたので参加した気分になれました。椎名さん作のコントが見れた!イベント開催にあたってのいろんなことを教えてもらって考えた時期でした。そして毎度のことながら本当に良い人を応援しているという気持ちにさせられる。最高の推しですありがとうございます。

・8月
「大演練〜控えの間〜」
数年に一度ある祭りのようななにかだった。配信チケットの金額に、こんなに安くていいのかと思ってたけど観終わってのちはまあ妥当だったと思うという。でもそういうお祭りとして楽しかったです。

・9月
『文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱』

mmm11.hatenablog.com2月以来の舞台、そして2月以来の椎名さんでした。やあ最高だったな…。個性対体制というテーマに対して、あと物語の結末について、どうも賛否両論あったようなんですが、私は好きな作品でした。ギリギリを攻めたなあとは思ったけど。でも舞台0番でがんじがらめにされながら叫ぶ白秋先生の姿は刺さるし、客電を灯して舞台上と客席との境界をあいまいにして読まれる(文字通り台本を読んでいる)セリフも響いた。2.5作品には珍しくキャストがほぼ30代なんだけど、その安定感も心地よかったです。

・10月
『黑世界』雨下の章、日和の章
雨下は配信で、日和だけ劇場に行くことができました。もうこれは鞘師さんのリリーに尽きる。LILIUMのときから変わらない姿の彼女がいるだけで、切ないし苦しいし、果てしない時間の長さを感じてくらくらしてしまう。そして三津谷さんが「リリーは強いね」というTweetをしていて、LILIUMのときと変わりないリリーをマリーゴールドCOCOONを経た彼がそう言うのが、なんか、なんか、もう……ソフィの救いはどこにあるの……。15歳の少女と14歳の少年という差もあるんだろうか。リリーのしなやかな強さが鞘師さんの体の動きにも現れていて、すごかった。再生するシーンでの動きに体幹の強さが遺憾なく発揮されていて、三津谷ソフィといい彼女といい、不死者として生きるためには鬼のような体幹が必要なのかもしれない。
両章通して、TRUMPのいるあの世界にもちゃんとしたまともな人はいるのだなあと思える話でした。心のある末満と言ってるひともいたけれど、でも不死者の再生についてはどうかと思う。あんな酷いことある?あと3話はどちらも様子がおかしい。

・11月
ひとしばい『ネバーランド、アゲイン』
7月の西田北村組がとっても良くて、いつか椎名さんもこんなのやってくれたらなーと思ったらまさか叶った。ほんっとうに素晴らしかったです。脚本演出はほさかようさん。ほさかさんが作ってくれたのは、それを椎名鯛造に言わせるのという意地悪さもふんだんにありつつ、今の彼だからこそできる、彼にしかできない、彼のための役で本でした。ともすれば社中の『ネバーランド』へのカウンターパンチにもなるようで、永遠の少年を演じる椎名さんを知る人にとってはなおさら辛く苦しい物語だったとも思います。そんなことないからー!って叫びたかった。だって「30過ぎてかわいいって言われるなんて褒め言葉じゃなくただ老け損なってるだけ」とか言わせる!?でもありがとう!!!観てるこちらの胸が苦しくなるような台詞も、くるくると変化する表情も、椎名さんの全部がつまったよい舞台だったなあ。コメディもシリアスも振り切れるところとか本当に好き。幸村の真似は胸アツだったしそうめん乱舞見たすぎるよね。
すごいスピードで畳み掛ける台詞とかどこか一点を見つめる目とか、涙の堰が切れる前の一瞬の表情とか、今でも全然覚えてます。最後「だから、大丈夫だよ」の場面が忘れられません。きっとこれからも辛かったり悲しかったり凹んだとき、あのときの声と、差し出された手と、あの表情とを、何回でも思い出すんだろうなあと思います。
早くまた見たいので一刻も早く円盤を出してください早く。

・12月
『ホテルアヴニール』
一人芝居に続いての二人芝居。現場と配信とで観ることができました。意外といっては失礼だけど、思いの外すごく楽しめた作品でした。オムニバス形式で4組8人の物語が連なる構成で、軽い味わいで楽しめる良質な小品という感じ。衣装もすごく可愛くて演出もなんだかおしゃれというか、洒脱というか。たぶんアドリブも多かったのかな?椎名さんのいろんな演技が見れて楽しかったです。推しは芝居がうまいんだよな……知ってたけど……
意外と(こればっかり言ってるけど)女の子2人の友情がぐっと刺さってしまったなあ。あのわけわかんない掛け合いとか、すぐ話が変わるところとか、すごいわかる〜って感じだった。

少年社中ライブストリーム「劇場に眠る少年の夢」
と、題された少年社中祭りに踊った12月でもありました。ニコ生配信とか朗読劇とか。新しく見ることができたのは『リチャード三世』。音楽がすごくかっこよかった!音楽も衣装も素敵なのはいつものことだけど、可愛さよりかっこよさに全振りなのは新鮮でした。あくまでエンタメの範疇にありながらの骨太作品というか。舞台で観てたら終わったあと疲れてそうだなーと思いました。鯨井さんがよい役どころで嬉しかったです。あの声が好きなんだよね…ハスキーでちょっと高め。あとシェイクスピアのくそめんどくさい台詞はいつか推しにも言ってもらいたい。
過去作を5作続けて観たあとの『トゥーランドット』は余計に胸に迫るものがありました。過去の社中メドレーでもうクライマックス感ある。
「演劇をするために生まれてきたんだ」これを言いたかった役者が今年はどれだけいたことか。

朗読劇『ネバーランド
おのれ新型コロナめと何度思ったかわからないけど、コロナ禍だったから出来上がった作品もあります。たとえばひとりしばい、たとえばこの朗読劇。それを思うと、おのれという気持ちは変わらないもののそんなに悪い年でもなかったのかもしれない。いや、そうでもない。でも、この状況下で作られたこの作品を見ることができて嬉しかったです。
私にとって初めてのリアルタイムで体験できる『ネバーランド』。すっごく面白かったです。みんな着席しての朗読劇なのにすごく演劇だしダイジェストじゃなくちゃんと『ネバーランド』でした。さすがオリジナルキャストのみなさん、気心の知れた仲間たちと作る演劇のありようというの見せてもらったように思います。すごく、少年社中〜〜って感じました。うまくいえないけど、とても少年社中。
オリジナル以外のキャスティングは予想外のことも多かったです。椎名さんのワニガミ様が一番意外でした。なんとなーくザンさんかなーと思っていたので、スッと手があがったときそこ!?と本気でびっくりしました。椎名さんは4役。それぞれで座り方を変える細やかさが好きです。あと私は椎名さんの巻き舌が好きだな…変わらぬ少年らしさとあのころより増えた武器とがあって、今の椎名さんの演じる影も観たいと強く思いました。本当に。ほんっとうに。
みんな楽しそうで、それが観てて一番私も楽しかったところだな。あ、あと『ネバーランド』の最後の暗転が天才なのは皆さんご存知のことですが、アフトで椎名さんがその暗転について「ここだけの話、実は暗転中舞台の上を一周飛んでから着地してる」とお話されてて、そういうとことてもいいなー!と思いました!ほんと飛べそうだし。

「鯛フェス」陸祭目
約1年振りに参加できた鯛フェス!すっごーーく楽しかったです。唐橋さんがなんだかいつもよりふわふわしてて笑、エチュードも上手くいかないことが多かったんだけど、それでも見応えたっぷりでした。椎名さんがなにか勘付いたとき、ひらめいたとき、ピコーンと電気が灯る様子が見えるのが私は本当に好き。

 

来年の観劇初めは刀ステの予定です。そして2月には最遊記歌劇伝がある!どうなるか本当にわからないけど、今年よりも良い年になりますように。そしてまた同じ言葉を。
皆さまにとって、私にとって、彼らにとって、素晴らしい作品や体験に出会える年になりますように。

世界を取り戻す ー舞台『文豪とアルケミスト 綴リ人ノ輪唱』

文劇3の京都公演が始まりました。
東京公演は配信を2回見ていて、視聴可能時間にアーカイブも繰り返し見たので内容はすっかり頭に入ってます。すごく面白い。
Twitterで感想を探すと地獄とか出てくるし、考察ふせったーも多いし、開幕前の演出家のツイートもいろいろ含みを持っていたので、一体なにが起こっているんだと思われてしまいそうだけど、決してそんな身構えるような作品ではなかったです。
初日に配信を観たとき、少年社中の『トゥーランドット』を思い出しました。奪われないためにたたかう人たちの物語。『トゥーランドット』は「演劇で世界を変える」というあまりにもまっすぐすぎる文言をコピーとして掲げていて、その真っ正直さが私には深く刺さったのだけど、あれから1年と約半年後のいま世界は違った意味で大きく変わってしまって、あのとき舞台で観た劇団員たちの奪われないためのたたかいは、今ではすぐそばにあることに感じられる。文劇3での、客席に向けて叫ばれるある台詞が重なります。
昨日すごく久しぶりに劇場で舞台を観て、取り戻したという感覚がありました。まだ完全にではないけど、でも奪われていたものをここから取り戻せるんだという気持ち。それをずっと取り戻せないままになってしまったひとのことを聞いたとき、すごく寂しく辛かった。そのひとはきっと誰かの世界を変えたことだってあったのに。
文劇3は、そういうメッセージ性はあるけれど、もともとの「文アル」のテーマを思えばそこから逸脱していないし、今だからこその作品というよりはその意味で普遍的な題材を扱っています(と、思います)。きっと観たのが今じゃなくても心に刺さったし、2.5作品としては挑戦的と感じただろうとも思う。そのうえで、私はこの作品を今観ることができて本当に良かったです。できることならもう失いたくないなあ。

劇場に行くのは2月末の『モマ』以来だから、だいたい7ヶ月ぶりくらい。舞台を観るようになってこんなに間が空いたのは初めてで、席について、まだうっすらと暗い舞台に組まれたセットを見たとき、それだけでもう泣きそうになっていました。そして客電が落ちただけでもう泣いた。
配信だけではわからなかった照明や演出、画面外でのキャストの演技、全部が全部、大切なものでした。
あと、推し〜〜〜〜〜!!7ヶ月以上ぶりの生の推し〜〜〜〜〜〜〜!!!という感じです。椎名さんは相変わらずよく動き、表情のひとつひとつ、指先の動きまでが細やかに表現豊かで、悲痛な叫び声でも泣き声でも台詞が聞き取りやすい発声で、よく跳び、よく回し蹴り、凛々しく、最高にかっこよく好きでした。好きでした!!!!好き!!!!!

文劇3は明日、日曜日の公演がマチソワともに配信があります。椎名さんが最高なのはさておいて、キャストの安定感が素晴らしく、舞台など創作物が好きな人には心に刺さる作品だと思います。

 

3月4月

2月のおわり、ペダステを観ました。マスクをして、劇場入り口に置いてあった消毒液も使って。千秋楽まで走り抜けられないかもしれない、いつ公演中止になってもおかしくない。そんな状況での観劇でした。
2月はじめに観た舞台でも、すでに品薄状態になっていたマスクの着用を求められたけれど、それから約20日後、事態はすっかり悪いほうへと傾いていて、そして4月の終わりも近い今もずっと変わっていません。

Twitterを開けば何かしらの公演が中止になっている。そんなことにも慣れてきてしまいました。私が行けなくなった舞台は4月にあるはずだった2公演。だからって残念な気持ちやショックが少ないこともなく、やっぱり残念だし悲しいしショックです。楽しみにしていた機会がなくなるのも辛いし、彼らの仕事が奪われていくのも辛い。世界規模での危機なのだから仕方のないことだけど、心がすり減ってくのだってどうしようもない。私は自分をまあまあのんきな人間だと思っていますが、それにしたって気持ちがざわめくのを止められない毎日を過ごしています。
正直なところ、彼は本当に大丈夫なの!?という面でそわそわしてる部分もあります。だけど同時に、こちらに向けて露出してくれてる一部分でしか計れないことを、勝手に慮ってもよくないとも思っていて。とにかく心身ともに健やかでいてくださいと祈るばかりです。

そういうわけでコダマみたいな顔で、着ていく予定のない服を買ったりTwitterで見かけた美味しいものを買ったり過去作の円盤観たりしているんですが、2ヶ月振りにブログを書かなくちゃと思い立ったのは、先日放送された『2.5次元男子推しTV』を観たからです。
鈴木さんとゲストのみなさんとの微妙な緊張感を毎回楽しんでいますが、今回は特に、この春の私の楽しみはここに全部あるくらいの気持ちで放送の日を待ってました。し、実際とっても楽しかった……とっても。2月の、おそらくOasis千秋楽後の撮影風景には今のような自粛態勢の影もない日常があって、そんな中で仲良したちがリラックスして遊ぶ様子と、3人にとって大事であろう作品についての話やそれぞれの関係性がうかがえる話は、なんだかすごく胸に迫るものがありました。有り体に言うと、元気出た。オアシスは個人的にも本当に素晴らしかったけど、鈴木さんの感想や素直な思いを聞けてとても嬉しかったです。椎名さんにとっても最高の言葉だったんじゃないだろうか。2人の絆、と言ってしまうと逆に軽くなってしまうかな、とにかく彼らの関係性がとても良いものだなあと思いました。なんていうか、出会ってくれてありがとーー!(ペンラ振り回し)という気持ちです。

そして週末には『エヴリィBuddy!』の円盤が届きました。去年の10月、初日が超大型台風に見舞われたものの、大阪からの公演だったことでどうにか幕を開けられた舞台です。「エンターテインメントのちから」というような言葉が役者さんから何回か出てきて、どうかどうか、なるべく早く、それが万全のものとなって私たちのもとへ戻ってきますように、と心から思います。
それはそれとして、本編はもちろん、特典映像も限定特典も盛りだくさんで素晴らしかったです。満足度がすごい。

聞こえますか ー少年社中『モマの火星探検記』

歌劇伝にわきわきとしている最中に、楽しみにしていたこちらに行ってきました。
社中さん新規の私にとって初めてのモマ!今年初めての少年社中です。
今回が再々演ということですが、それも納得の良い舞台でした。一番好きかというとまた別なんだけど。機械城のときだったかな、社中ニコ生特番で、毛利さんが演出家になってなかったら人殺しになってたかもしれないなんてことをにこにことお話されていて、やべーな…と思ったことがあったんですが、私は毛利さんのそういう尖った部分というか、この人やばいという部分を愛してやまないので、その意味での物足りなさはありました。だけど原作は児童文学だしね。物足りなさは物語が優しいってことでもあって、だからこれでいいんだと思います。子どもに優しいのは至極真っ当だし安心する。
あと生駒ちゃんすごく可愛いし…!あんな可愛い子を悲しませたらいけない。

以下、ネタバレ含みます。

いつものとおり、社中さんの舞台は目が楽しい。衣装はもちろんのこと、照明もとても綺麗でした。星空が劇場全体に広がって宇宙にいるみたい。舞台作品の映像化も当たり前になってありがたいことだけど、照明の美しさは劇場でないと味わえないなあと思います。衣装で特筆すべきはユーリの足のモフモフ!あれは天才すぎるでしょ…。中学生チームプラスお母さんはどこか民族衣装っぽく、宇宙飛行士チームもスーツのトップスがそれぞれの国の衣装モチーフになってるのが素敵。モマがどことなく王子様めいてるんだけど、おじさんの衣装も金ボタンが並んでてちょっと雰囲気が似ていて、そういうところがたまらないです。好き。本当の本当に思うんだけど、社中さんはいつかきっと衣装展をやって欲しい。望んでる人絶対多いよー!
夢を見続けることの大切さがいちばんのテーマかなと思います。それと同時に、親子の物語でもありました。モマとユーリ、お母さんとユーリ、おじさんとモマ、そして側面ではあるけどお母さんとそのお父さん。お母さんは反発を覚えてしまう役どころなんだけど嫌いにはなれなかったです。だってモマの家をそのままにしていることや、何よりユーリを見るだけで、愛情深い人なんだというのはわかる。お母さんは子どもの頃からずっとおいてけぼりの気持ちなんだろうな。物理的にも心情的にも。そういう寂しさって他者に願ってどうしてもらえるものじゃなく、結局は自分自身で折り合いつけるしかないと思うんだけど、物語の最後を見るに、ユーリとお母さんは少しずつでも歩み寄っていけるんじゃないかな。
アポロ13」とか「オデッセイ」とか、訓練を受けた宇宙飛行士が不測の事態にも冷静に対処する映画のファンなので、「モマ」の宇宙飛行士たちのそういう描写もすごく好きでした。故郷のゆくさきも悲しいしらせも静かに受け入れて、精神的にはいつでもフラットであるよう鍛えられてる。でもホルストのように、だからこその苦しさもきっとあって。何度か出てくる彼らの祈りの姿がそれぞれ違って美しかったです。あのシーンを見比べるためにだけでも円盤欲しい。
スコープスは、ずるいな〜〜〜!!って思いました。みんな大好きでしょうスコープス。鈴木のしょうごさんのお顔がよくわからないのはちょっと残念などと思ってたんですが、全然、もうとっても良い役だったね!スコープスのショートコントに泣かされるなんて。
物語はある程度想像通りに進んでいって、悲劇の部分も予想していたことだったので、気持ち的にはいちばん盛り上がったロケット打ち上げからなだらかに収束していく感じ。贅沢を言えば、最後にまたダンスが観たかった。あと東西声。とざい、とーざい!本当に、良いものを観たなーと思います。その気持ちはじんわりずっと残っているんだろうな。

次回作も楽しみです。

 

つづく ー『最遊記歌劇伝-Oasis-』その2

ついに、残しておいた配信のタイムシフトも見てしまいました。いよいよ終わってしまったんだなあ…という気持ち。続きがあることは信じてるけど、でもまた何年かはかかってしまうのかな、どうなんだろうな。素晴らしいものを届けてくれたキャスト、スタッフの皆さんにありがとうございましたと感謝するとともに、彼らの西への旅がまだまだ見たいと、大きめに声をあげていきたいです。アニメの最後に「つづく!」と出るみたいな終わりかただったしね!

もちろん劇場で観られるならそのほうがいいに決まってるけど、映像では表情がはっきりと見えるので、その点ではとても好き。セリフのない部分でのお芝居のきめ細やかさに心臓を掴まれる場面も多かったです。なんて顔するの!と思って。たとえば、OP終わってすぐの手をのばす悟空とか…病み上がりに八戒悟浄に諭された悟空が顔を上げてまた立ち上がるときとか…あと最後の「俺が行きたいから行くんだ」のところとか……なんてかおをするの!!それとちょっと話はずれるけど、この前『ピカレスクセブン』も見てしみじみと思ったんだけど、椎名さんの「幼さ」の演技は職人技だなって。今回の悟空は彼の成長ストーリーなのもあってそんな場面は少ないけど、ちょっとした動きとか表情がすごく子どもっぽくて、おぉとなりました。若く見えるというのとは違くて。技術だなあ。

表情でいうと、ヘイゼルがよく変わって可愛かったです。歌劇伝のヘイゼルは似顔絵がかわいく描けそうな気がする…なんかちょっと可愛げがあるというか。原作よりも雑っていうか、神経質っぽさが控えめというか、あんまり繊細じゃなさそう。少女とお兄ちゃんもとっても良かった!アンサンブル中心の歌(キープアウト!というやつ)でのお兄ちゃんの表情がとても好きでした。それ以外でも悟空に帽子をあげるエピソードとかで彼の面倒見の良さが全面的に印象深く描かれてたので、そのぶんわかっている展開が辛かったです。やり切れない。ひなべっこシーンでPに絡まれたとき妹を守るとこや兄妹の靴がおそろいだったのもにこにこしてしまったな…やり切れない……。

あと大好きだったのは、OPでもEDでも、今回はいなかった三蔵の立ち位置がはっきりとわかる場面があったところ。いつも悟空と担当してるパートは別の誰かが替わるんじゃなく、シンプルに三蔵が抜けた形になってたところも。早く!拾いに行って!!

ニコ生での振り返りで、いろいろなお話を聞けて嬉しかったです。いつもだけど、そういうこと教えてくれてありがとうーって思います。公演前のお祓いについてなど、貴重なお話でした。ご本人は最後まで座長(仮)と言ってたけど、立派な座長だったよってたぶんみんな思ってる。でもその(仮)の部分に鈴木さんへの思いが詰まってるんだろうなあ。本当に、なるべく早く西への旅が続くといいね。って、私が観たいからという以上に思いました。

覚悟について ー『最遊記歌劇伝-Oasis-』

1月は2019年のまとめを書くなどしていたら終わってました(まだ書き終えてない)。

そんなことよりも『最遊記歌劇伝』の新作を!観てきたのです!!最高だったなー!!今回すごく好き。

去年1月に前作『Darkness』と一緒に発表されてから、1年と1ヶ月後の上演です。鈴木さんと唐橋さんのいない初めての公演。ダークネス終演後から鈴木さん=三蔵がいなくて最遊記歌劇伝が成立するのか、という意見はちらほらと見かけていて、もっと強い口調だと「いないのにやる意味あるの?」と言っている人もいたのだけど、観劇後の今はその人たちへ向けて、あったよー!!と手を振るような気分です。

この形での公演が決まるまでには、たくさんの話し合いがあったと思うのです。制作のえらい人たちだけでなく、おそらくはキャストとも。そうして鈴木さん不在でも物語を先に進めることを決めた。その決断はたぶんいろんな人にとって覚悟のいることで、それを強く感じる舞台でした。

本当に素敵だった。お疲れさまでした。

以下、舞台のネタバレ、原作の展開に触れています。

 

最遊記歌劇伝-Oasis-』

椎名さんの悟空がすごく好きだなー!!と改めて思いました。観ると毎秒ごとにその気持ちが更新されるのですごい。

三蔵がいなくても全然最遊記歌劇伝だったけど、でもやっぱり三蔵が真ん中にいるのとは違う、悟空の最遊記歌劇伝だったという印象です。

最初の悟空のソロ、歌詞が好き。「次に昇る太陽もまた西を目指すのかな」という部分、悟空もそれくらい当たり前に西に向かってたってことなんだろうな。悟空の物語であるオアシスがこの歌詞から始まるという意義の深さがもう。それはそれとして悟空の素直さがそのまま出てる歌詞がとてもかわいい。

今回新曲が多かったような気がします。メインキャストが減って割り振りが増えたからそう思うのかな。みんなすごい歌ってた。そしてみんなすごく上手でした。確実にダークネスより上手くなってない??

歌劇伝の歌は物語の進行から独立してなくて(歌劇だからそりゃそうなんだけど)、話の一場面を担ってるので、シリーズを重ねて誰がどこでどの歌を歌うかに意味が出てくるのが面白いなーと思います。今回は三蔵法師のみなさんが全員いないので特にそういう箇所が多くて、なんか、なんか、エモとはまさにこれだなって……

光明パートだった「あなたに伝えたい」をOPで悟空が歌ったとき、こんな真っ直ぐに「あなた」を見据えた歌い方するんだとちょっとした衝撃を受けました。EDではヘイゼルが担当してたけど、光明が看守ってる視線なのに対して2人にとっての「あなた」は保護者という対比が新鮮。

今回の歌はどれも本当にすごく印象的だったんだけど、なんか一番うわあとなったのが、お決まりの茶番劇で出てきた恋の歌が最後に出てきたことでした。いろんな意味のうわあ!です。初出しそこ!?とも思うし、でもあのバカバカしいくらいの日常で歌われた歌が最後にもう一度歌われることで辛さがより増す、よい演出だった…。情緒がガッタガタになるけれど、情緒なんてガタガタになるためのものだしね!!ヘイゼルの歌唱力で余計に辛いんだよー。

法月さんのヘイゼルは可愛げがあるっていうか、なんかキュート。今回はセリフの掛け合いだけだけど子ども時代も演じていたから特にそう思うのかも。置いていかれて拗ねた子どもみたいで、愛しさが増してしまう。オアシス編は悟空たちのいる妖怪の村だけでなく人間側の描写もなくてはいけないものだけど、ヘイゼルがよく喋るから(褒めてる)三蔵の不在がそんなに気にならなかった。演技の緩急が心地良かったです。

三蔵の演出に関しては、賛否あるだろうとは思ったけど、試行錯誤の結果なんだろうなーって。そりゃ鈴木さんにいてほしかったに決まってるよ!個人的には烏哭と同程度にして、あとは相対する役者さんの演技に任せてもよかったんじゃと思ったけど、それが正解だとも思わない。なのであれがベストなんでしょう。「一寸の虫にも〜」のくだりは次回やってくれるって信じてる。

と、いうのも、冒頭でダークネス振り返り部分があったからです。藤原さん八戒でのVS斉天大聖、観ることができて嬉しかった!そしてダークネスに引き続き斉天大聖のアクションを堪能できてとてもお得な気分です。ガトの銃弾を歯で受け止めてぺって吐き出すところが大好きすぎて何度でも見たい。そしていつもは悟空が歌う「ただ生きている〜」を八戒と悟空を両脇に抱えた悟浄が歌うところもとてもよかった。悟浄といえばソロの太陽くんすごく歌上手くなった!そして歌詞!いつかの原作の扉にあったやつ!

出演キャストが発表されたとき、少女役が女性じゃないのがすこし(いや結構)ショックだったんですが、歌劇伝はもうそういうものなんだと受け入れたら、少女役村田さんはすごく良かったです。ちゃんと少女だった。あとお歌がじょうず!悟空は座組の中でも本当に小さいんだけど、でもその小さい悟空よりさらに小柄で、人材とはいるところにはいるものだ…と思いました。

そして、悟空は本当にかっこよかったです。彼は本当に、人の感情を引き込む演技をする人だと思う。「生きてていいんだ」って子どもたちに言う場面、観客に向けて語りかけるので逆光になって表情がよく見えないんだけど、声だけで思いが伝わる。いいシーンでした。この場面に限らず、照明の使い方は全体的に好きだったな。舞台上だけでなく、客席にまで効果のある使い方で。

なんかもう、一場面ずつここが良かった最高って書けそうなんだけどきりがないのでそれはまた別に記事を書くとして(書きます)、とにかく良かったです。悟空の歌が、たぶんキーがぴったり合ってるおかげでもあるんだろうけど、すごく伸びやかで良かった。EDではダンスしたり走り回ったりずーっとくるくると動いていて、いつもの歌劇伝とは違う悟空が真ん中の歌劇伝を一番感じた部分だったなー。落ち着きがないというか、元気いっぱい。特に好きだったのは、「生きろ」「もっと」という歌。悟空の歌声は、さっきも書いたけど本当にまっすぐ響く。泣きながら地面を殴る場面でこぶしが本当に震えてるのを見て、全身で表現するってこういうことだと思いました。

そういえばカテコでいつもにこにこ顔で出てくる悟空が、今回は真顔で登場して切ないような頼もしいような気持ちでグッときたんですが、最後に悟浄と八戒との挨拶ではいつも通り手を繋いで背伸びしてたので嬉しかったです。椎名さん、挨拶で大きい声出そうってときにちょっと背伸びするのがとてもかわいい。

 

ここまで続けてきた以上、もうキャスト変更はしない方向でどうにか続けていくのでしょう。そういう覚悟をひしひしと感じる作品でした。ヘイゼル編の一段落まであと1回かな?待ってます。だって絶対に見たいよ!外伝だって見たいんだよ!!